24 君が生きた証

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「囚人の脱獄に加担したんだ。」

「!」


「でも後悔はしていない。俺はよくソイツの話しを聞いていたんだけど、政府が仕組んだ計画的なたくらみに巻きこまれた被害者なんだ、ソイツは。」

「ハヤトさん、それ、囚人の話しをうのみにしたんですか?」

「いや、もちろん俺自身も調べたよ。その囚人の名はミナキと言うんだが、政府は風の能力者を言いなりにするために、ミナキを人質として捕らえていたんだ。」

「!」


たしかハヤトの持ち場はキキョウシティ。

以前ゴールドがクリスから聞いていたミナキという名と照らし合わせても、風の能力者と言うのはクリスで間違いないだろう。


「脱獄は上手くいったんですか?」

「ああ。でも、その風の能力者にはいつも見張りがついていて、ミナキはなかなか接触できていない。彼女がミナキが人質ではなくなったことを知っていればいいんだが…。」

「(…まさか、こんなところでつながりがあるなんて、ね…。)」


シオンタワーで戦ったとき、クリスは完全にナツメの言いなりだった。

ミナキが逃げ出したことは確実に知らされていない。


…なんて、残虐なんだろう。



「まあそういった理由で貨物の運搬の仕事についたんだけど、たまにワタルさんから要請があったら罪人の捕獲にいくこともあるんだ。今日グレン島の近くにいたのもそれが理由だよ。」

「ワタルとの関係って、」

「俺が追われていたら、助けてくれて…そこから彼に信頼をよせるようになった。すごい人だよ、ワタルさんは。世界を変えるぐらいの力を持ってる。」

「それって、どういう…」

「おっと、ワタルさんについてはあまり詳しく話さない約束だから、聞かないでくれるかな?」

「…分かりました。…ハヤトさん、変わりと言ってはなんですが、最後に1つだけ別のことを聞いてもいいですか?」

「答えられる範囲ならね。」



イミテは良かった、と微笑んで続ける。




「その貨物関係の仕事を始めた理由って、本当にそれだけですか?」


「どういう意味だい?」


「……そのままの意味です。ごまかさないでくださいね。」


「…君は、本当に鋭いね。」


ハヤトはハハッと苦笑いをする。



「あるよ。この仕事を始めたのはもう1つの大きな理由。」

「…それ、聞いてもいいですか?」


ハヤトはコクリと頷いて続けた。


「貨物の輸送のためにいろいろな場所に行けるからだ。」

「え…?」

「俺は新しい町に立ち寄るたびに、その少年がいないかを探してた。バカみたいだろう?数えきれないほどの人もの中からたった1人を見つけ出すなんて、無理に決まってるのに。」

「…見つけ出して、謝って、……彼に許してほしいんですか?」


「いや…。今さら謝ったって彼のお母さんは返ってこないし、俺のやったことに変わりはない。許してもらえると思ってないよ。」



…ハヤトは遠い目をして言った。



「……ただ、無事だけでも確認したかったんだ。」

「!」

「彼は生きている。ただ…それだけが分かれば良い。」

「…。」


―……彼は優しい人だ


イミテは心の中で強くそう思った。


自分の罪を認め、受け入れ、他人のことを何より心配している。


…優しい、人だ。




「私は…その男の子、生きていると思います。」

「はは、気休めはよしてくれ。気を使わなくていいよ。」


「いいえ、きっと生きてます。」

イミテちゃん、」


「仲間をつくって、いろんな困難を彼らとともに乗り越えて、楽しい日々を送ってます。」

「……。」



イミテはまっすぐと、言う。



「彼はきっと、ハヤトさんが思っている以上に強いです。私はその男の子はハヤトさんの本音を聞いて全てを許すと思う。」


「!イミテちゃん、もしかして…彼のこと、」



ハヤトが言いかけた時、イミテは人差し指を口の前にもってきて「しー、」と合図した。


「……。」


「生きてます。彼は、元気です。」


イミテはハヤトにしか聞こえないぐらい小さな声でそう言うと、フッと視線を上に向ける。

ハヤトもそれを追いかけて上を見た。



……すると、チラリと天井の柱によりかかる人影が。


柱に背をあずけていて顔は見えないが、柱の影から、ひょっこりと昔と変わらない、特徴的な彼の前髪がのぞいていた。




「ッ…!!」




生きていた!

彼は、生きていた…!!




「…っ、」



ハヤトの目から涙が溢れ出る。




「………そう、か…」



大の大人が泣くなんてみっともない。

しかし、止めることができなかった。



「生きている、か……!」



次から次へとそれは、流れ出る。



幸いゴールドの位置からだとハヤトの様子は見えていないはずだ。

そしてこの状況(ハヤトがゴールドに気づいたこと)も、彼は気づいていない。



「はい、きっと。」



イミテはいたずらな笑みをうかべて、そう言った。



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