02 揺れる金は儚くて
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「今後お前をわが軍の一員と認める。心して軍事訓練に励み、国を守れ。」
「…はい。」
小さく返事をしたイエロー。
王はイエローを見て少し顔をしかめると、側近に目で合図を送る。
それをうけた側近は、サッとイエローのそばにより耳打ちをした。
「帽子を脱ぎなさい。目上の方と話しをするときは、顔を見せて敬意や忠誠心を表すものです。」
「え…!?」
「ましてやアナタが今話しをしているお相手はこの国の国王様。立場をわきまえなさい。」
「え、でも…、」
イエローは言葉を濁らせた。
帽子で髪を隠しているため、帽子を脱げば女だとバレてしまう。
「(何、話してるんだろ…)」
不穏な空気がただよっているのに気づき、イミテは眉間にシワをよせた。
イミテがいる場所からは、イエローと側近の会話は聞こえないのだ。
ゆえに、今イエローが危機的状況に追いやられているなんて全く分からない。
「早く脱ぎなさい!」
なかなか帽子をとろうとしないイエローにしびれをきらしたのか、側近は無理矢理イエローの帽子に手をかける。
「あ…、待っ…!」
イエローの抵抗もむなしく、バッと帽子が取り上げられる。
バサッ、と
長いキレイな金髪のポニーテールが、静かに揺れた。
帽子を取った側近も、目の前にいた王も、ついさっきまでイエローと戦っていたタケシも、それを見守っていた軍人も。
誰もが状況を飲み込めず、自らの目を疑った。
「まさか…女…!?」
誰かがポツリとつぶやき静寂をやぶった。
それを合図にしたかのように、ざわざわと皆が騒ぎ始める。
「男じゃなかったのか…!?」
「あの髪、女だろ!」
「それ以前に、アイツ、この前の侵入者に似てないか…!?」
「「「!」」」
女であるということに加え、かつての侵入者だということもバレてしまった。
空気が一瞬にして緊迫したものに変わり、皆がイエローの様子をうかがっている。
「(ど、どうしよう…!)」
イエローは辺りをゆっくりと見回し、どこか逃げ道がないか探すが、先ほどの試合の影響で周りには軍人ばかり。
逃げ場なんてなかった。
身動きがとれずにいるイエローを指差して、王は激怒しながら言った。
「貴様…!私を殺すために軍人になって機会をうかがおうとしたのか…!!」
「!」
「返りうちにしてやれ!この場で殺せ!」
王はイエローをビシッと指差して命令する。
剣や槍が、イエローに一斉に向けられた。
「!」
イエローもとっさに腰にあった短剣をぬくが、相手が多すぎる。
「おとなしくしてろ!」
イエローの背後にいた軍人が先立って、剣を片手に攻撃をけしかけた。
「(え…、)」
素早い動きに反応できず、イエローは思わず、固く目をつむる。
直後、カキンという高い金属音が響いた
「…?」
不思議に思って目を開ければ、唖然としている軍人がいて…
その手に、ついさっきまであった剣はなかった。
「イエロー。大丈夫?」
そう言いながらイエローに歩み寄ったのは…、イミテだ。
彼女の手には弓が握られている。
「イミテ…何のまねだ!」
「何って…別に、剣を弓矢ではじき飛ばしただけだけど?」
「そういう意味じゃねえ!バカにしてるのか…!?」
しらっと答えたイミテに、軍人はギリッ…と悔しそうな顔をする。
そう、先ほどの金属音は、剣がはじき飛ばされた音だったのだ。
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