23 私が観ていた世界
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トサッ
そんな音をたてて、ブルーが地面に膝をついた。
「ブルーさん!?どうしました!?」
「能力使ったからッスか!?」
「…いいえ。」
ブルーは切なそうな…でもそれでいて嬉しそうな、なんともいえない表情で微笑んだ。
「やっと、終わったんだ、と思って。」
「「!」」
「姉さん…」
マチスから解放されたあとも、いつも心のどこかに引っかかっていた。
それは心に影響し、何度も悪夢にうなされた。
解放されたハズなのに、いつだってそこに、自由はなかった。
“姉さん…”
“どうしたの?シルバー。眠れないの?”
“うん…”
“シルバー?”
“…前に姉さん、言ってたけど…助けなんて本当に来るのかな…”
“え、”
“毎日毎日、皆、減ってくのに。皆、泣いてるのに。ここに来る大人は、笑ってる”
“…、”
“誰も気づいてもらえずに終わる気がするんだ”
幼い瞳が絶望を語っていた。
希望を失いそうになっていた。
だから…
“言ったでしょう?大丈夫だって”
“…”
“信じましょう、シルバー”
“でも、”
“あら?アタシの言うことが信じられないの?”
“そういう意味じゃ、”
“うふふ。さ、寝ましょう。明日も仕事があるんだから…”
“…うん”
根拠もないのに、そう言った。
むしろ逆の可能性のほうが高いのに。
希望を失わせたくなくて、なんとか信じてほしくて。
罪悪感に心が痛んでも、それだけは曲げられなかった。
(きっと、彼と自分を重ね合わせていたから)
もうその心配もない。
だってそれは、事実になった。
「はは!これから好きなこと、何でもできるな。」
レッドが剣を鞘におさめてから、笑って言った。
(自分達にはちゃんと助けが来た)
(だから、ほら)
(自由になれた)
「オホホ。まず何からやろうかしら。」
「ブルー先輩がこれ以上やりたいことやりたい放題したら、大変なことになりそうッスね。」
「あらゴールド。それ、どういう意味かしら?」
「え、いや…そのお…」
「口の聞き方をわきまえろ。」
「お前には言われたくねーよ、シルバー!1人で勝手に突っ走ったくせに!」
「お前に文句を言われる筋合いはない。」
いつものごとく言い争いを始める2人をよそに、イミテが言った。
「まあ、まずはぼんやり空でも眺めてみたらいいんじゃない?」
「空?」
「些細なものほど、見え方が変わってくるものだから。」
イミテは笑みをうかべる。
その優しい笑みに、ブルーは空を見上げた。
ずっと、空を自由に飛び回る鳥がうらやましかった。
それは自分にとって言わば自由の象徴で、ずっと…遠い存在に感じていた。
“パパ!ママ!見て!すっごくお空が青い!”
“そうね。アナタの瞳の色にそっくりな綺麗な色だわ”
“私の目、お空とおそろいなの?”
“ああ。お前の目はこの空と同じ、一点の曇りもない、透き通った色だよ”
“まるでお空もこの日をお祝いしてくれてるみたいね、ブルー。”
“え?この日って?”
“ははは!なんだ、自分のことなのに分かってなかったのか”
“じゃあ改めて…、”
それなのに、
““誕生日おめでとう、ブルー””
ああ…今はこんなにも近い。
「そうね。」
ブルーは幸せそうに笑った。
過去の辛い経験は消えないけれど、
少なくとも、もう
この先に怯えるものはない。
きっと、恨みも憎しみも、
ゆっくりとゆっくりと
消えていく。
空の見え方が変わったのは
いつからだったんだろう
あの大空を見ていたのは
いつだって
自分のこの瞳だったのに
.