23 私が観ていた世界
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「ねえ。どうするつもり?」
「何が?」
「そいつらよ。」
ブルーはシャムとカーツをチラリと見て言った。
「動けないようにしてここに置いていく。仮面の男を倒したら、そいつと一緒に軍につきだす。」
「フ…フハハハハ!」
グリーンの言葉を聞いてカーツは高笑いをする。
「我らが首領様を、簡単に倒せると思うな。あのお方は強い。」
「意識があったのか。ちょうどいい。おい、仮面の男が氷の能力者というのは本当なのか?」
「誰がお前たちに教える…、う…!」
カーツが言いかけたとき、彼を縛っている縄をグリーンがぐっと強くひいた。
カーツは小さくうめき声をあげる。
「答えろ。」
「…フ、そうさ!仮面の男(マスク・オブ・アイス)というように、あのお方は氷の使い手。…だから、ブルー。」
「…何よ。」
「水を使うお前にあのお方を倒すことはできない。一生恐怖におびえて生きていくしかないんだよ!ハハハハ!」
「…。」
ブルーは冷たい目で、笑っているカーツを見ていた。
「黙れ。」
そんな彼女を気遣ってか、グリーンが手刀を首にくらわせてカーツを気絶させる。
「…なによ。余計なことして。あわれにでも思った?」
「コイツとこれ以上話すことなんてないだろう。あとはうるさいだけだから黙らせたまでだ。別にお前のためじゃない。」
「あら、そう。」
ブルーはしれっとそう言うと、「じゃあ早いところイミテ達と合流しましょう。」と言って足早に歩き出した。
「…おい。」
「なに?」
グリーンも早足で歩きながらブルーにたずねる。
「アイツらに何もしなくてよかったのか?」
「何もって…、むしろ何をしろって言うのよ?」
「いや…、お前は結局さっきの戦いで手を出してない。アイツらに対して、思うこともあったんじゃないのか?」
ブルーはシャムとカーツのことを世話役と言っていた。
ブルーとシルバーが仮面の男の元にいた頃、ひどい扱いを受けていたことは彼女から話しを聞いて知っている。
当時のやりきれない思いや、恨みなど、少なからずともあるだろうに。
ブルーは彼らの挑発ともとれる言動に取り乱すことなく冷静だった。
「別に今更アイツらを痛めつけてどうなるって話でもないでしょ?それに、ある意味アイツらもアタシ達と同じだから。」
「?」
「アイツらもさらわれてきた子供なの。それなのに仮面の男に忠実だったから、気に入られて世話役に任命されて、それからずっと仮面の男の手足として働いてるのよ。」
自分たちと変わらない。
彼らもまた、自由なんてない。
「でも、媚びをうって大事にされて…それで満足してる。そこがアタシ達とアイツらの唯一の違い。」
縛られた世界で生きることを、心地よいと思っている彼ら。
鳥カゴの中にいれば、
天敵に襲われることも、飢え死にすることもない。
そこから見える大空は自分達とは無縁のものだと割りきってしまえば、
そこは何よりの安全地帯となる。
「そんなかわいそうな奴らを痛めつけようなんて思わないわ。」
彼らは、鳥カゴの外の世界を知らない、かわいそうな鳥。
羽ばたくことを忘れてしまった、かわいそうな鳥。
そう…、“かわいそう”な。
ただ本人達にその自覚はない。
ああ、なんだか…
(ああ、もう…それすらもかわいそうだ。)
「…向こうも同じようにあたしのことをかわいそうだと思ってるでしょうけど。」
自分が他人を悪く評価するのなら、
少なからずとも、その相手も自分のことを悪く評価するのと同じ。
あの2人もずっと、ブルーとシルバーのことをかわいそうな奴ら、と思っていたに違いない。
どんなに辛い仕打ちをうけても、決して媚びなかった、バカな奴ら。
さらわれて、能力者という化け物になってしまった、かわいそうな奴ら。
処分されそうになったけど、それも叶わぬまま、
挙げ句の果てに悪事を働く男に売られていった、あわれな奴ら。
そして今、復讐の念にとらわれている、無様な奴ら。
「まっ、お互い様ってこと!」
苦しい想いをかき消すかのように、ブルーはパチンとウインクをしながら明るい口調で言う。
「…。」
グリーンはかける言葉が見つからず、ペースを少しだけ早めた。
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