23 私が観ていた世界
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「グリーン!」
空高く伸びた蔓を見て、ブルーが声をあげた。
「(よりによってイミテのところか…)ああ、…急ぐぞ!」
そう言って、バッと走り出す。
しかし、数歩進んだところで、グリーン、ブルー、ともに足を止めた。
「…油断するなよ。」
「こっちのセリフよ。」
そんな返事にフッと笑うと、彼は続ける。
「姿を現せ。」
茂みに向けて、グリーンが低い声で言った。
すると、ガサリと気配が動いた。
「クク…、気配を消していたのに気づいたか。鋭いな。」
現れたのは不気味な仮面を片面だけつけた男女の2人組。
「…あれが仮面の男か?」
「いいえ、違うわ。アイツらは仮面の男の手下。さらった子供達の世話役よ。」
「ふふ…久しぶりね、ブルー。ずいぶんと美人になったじゃない。」
「あら、ありがと。そういうアンタも、ずいぶんといい服身につけてるじゃない。」
ブルーが放つ雰囲気が、厳しいものへと変わった。
「子ども達を売り買いして稼いだお金で、ずいぶんと贅沢してるみたいね。」
それをあざ笑うかのように女は言う。
「ふふ…、口も達者になったわね。首領様に復讐でもしに来たのかしら?」
「復讐なんかじゃないわ。ちょっと挨拶にきただけ。アイツはどこにいるの?」
「そんな恨みがにじみ出ているような目でよく言うわね。教えるわけがないでしょ。」
「あのお方のしていることは、俺達にとっても希望そのもの。それを邪魔するものは…排除するまで!」
そう言って、男と女は武器を取り出す。
細身の剣…いわゆる、レイピアだ。
「グリーン。男がカーツで、女がシャムよ。見ての通りどっちも剣士。コイツラは小さいときから仮面の男に指導を受けていたから…その腕前はそうとうのもの…らしいわ。」
「らしい?」
「アタシは実際に戦ったことないから分からないの。あくまで噂よ。」
「フン…構えからしてそうは思えないが。すぐに終わらせる。」
「フッ…我々を甘く見たことを後悔させてやる!!」
シャムとカーツは、ダッと勢いよくグリーンとブルーに向かって走りだす。
「ブルー!お前は下がってろ!」
「嫌よ!アタシも、」
「アイツらだってバカじゃない。お前が復讐しにくると思ってある程度の下調べはしてあるだろう。」
「…。」
「まずは様子見だ。俺1人でやる。無理だと思ったら加勢してくれ。」
「…分かったわ。」
グリーンの言うことはもっともだと、ブルーは一歩後ろに下がる。
その間にも、あっという間に距離がつまっていた。
「(きた…!)」
ブルーはこっそりと能力の媒介である仏具に手を伸ばす。
危なくなったらすぐに援護できるように。
近くに川などがないこの場所でどれだけ援護できるかは分からないが…グリーン1人にまかせるわけにはいかない。
「(1対2で、どこまで対抗できるかしら…。)」
…しかし、そんな心配は無用だった。
「…遅い。」
ただ一言。
グリーンがそう呟いて、次の瞬間、シャムとカーツが手にしていた武器は後方に弾き飛んでいた。
「う…!」
「ぐ…!!」
「(え…!?)」
丸腰になった2人のみぞおちに、グリーンは剣の柄で攻撃をする。
急所にはいったのか、2人は地面に倒れた。
「弱…!能力使うまでもないなんて…。噂は間違いだったのね。」
「いや、そうは言い切れない。」
「こんなあっけなく倒しておいて、何言ってるのよ?」
「その噂がコイツらを強く…いや、むしろ周りの人間を弱くしていたんだろう。」
「どういう意味?」
首を傾げたブルーに、グリーンはカーツのレイピアを拾い上げて眺めながら続ける。
「“仮面の男の手下は強い”と周囲に思いこませれば、アイツらと対峙したとき少なくとも恐怖が芽生える。それが隙につながって、実際の戦いにも反映され、結果的に“強い”ということが事実になる。」
「ちょっと待って。じゃあ何でアンタは余裕で勝てたの?」
「俺は自分で経験したものしか信じないからだ。」
「なるほどね。グリーンの性格からして、そんな感じがするわ。窮屈なぐらいお堅いものね、アンタって。」
「…。」
グリーンはブルーに対してただ無言を返すと、倒れている2人に近づいた。
そして手持ちの荷物から縄を取り出し、手足を縛っていく。
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