22 痛みを知る者
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「大体の作戦は決まったし、そろそろ部屋に戻るか。」
「そうだね。ゴールドが部屋に来たらグリーンが寂しがってたって言っとくよ。」
「お!俺も俺も!」
「お前ら、大概にしろ。…まあ、早く部屋に戻れぐらいは伝えとけ。」
嫌そうな顔をしながらもそう言ったグリーンを見て、レッドとイミテは楽しそうに笑った。
「(あれ?グリーン先輩って、意外といい人?不器用なだけ?)」
“グリーンは不器用なとこあるけど、仲 間を邪険にしたりはしない”
ゴールドは昨日イミテが言っていたそんな言葉を思いだしていた。
それから数十分後。
さっき彼らの会話を聞いていたため少し気まずく思いながらもゴールドは部屋に戻った。
グリーンは本を読んでいて、扉を開ければこっちをチラリと見て、また視線を本に戻した。
そのまま話しかける。
「…遅かったな。」
「…そうッスか?」
「船酔いは?」
「へ?」
「まだ気分悪いのか?」
「ああ…まあ。でもさっきよりかは良くなった気もするッス。」
「…そうか。」
「…。」
「…。」
ポツリポツリと交わされる会話。
しかしすぐにそれはすぐに途切れ沈黙が続く。
「(なんなんだ、このむずがゆい空気。)」
ゴールドはとりあえず寝袋の上に座った。
それに気づいたグリーンが、また口を開く。
「おい。船酔いがひどいならベッドで寝るか?」
「!?いやいや!そうなったらグリーン先輩が寝袋になっちまうじゃないッスか!」
「…吐かれるよりはいい。」
「吐かないッスよ!グリーン先輩のおかげで、外ぶらぶらしてたからだいぶ気分良くなったんで!」
思わずゴールドは嫌みを返す。
グリーンも無言になった。
「(たくっ、相変わらず嫌な言い方するよな。けど…話しかけてきたっつーことは、グリーン先輩なりに気にしてくれてんのか?いや、でもまた本読み始めたし…)」
ぐるぐると様々な考えがゴールドの頭の中をうずまく。
しかし、それはほんの数秒で終わった。
もともと行動派な彼には考えて悩むことは性に合わなかったのだ。
「あー!もう!じれってえ!!」
ゴールドは両腕を上につきあげてそう叫ぶと、グリーンを見て言った。
「グリーン先輩が急に優しくなるなんて気味悪いッスよ。レッド先輩達に仲良くしろとでも言われたんスか?」
「…。」
「まあいいや。優しいついでに、…グリーン先輩。聞きたいことがあるんですけど。」
回りくどいのは苦手だ。
だったら、自分から歩み寄ってみれば分かるかもしれない。
彼の気持ちが。
「なんだ?」
グリーンは相変わらず本に視線を向けたまま言う。
「レッド先輩がなんで記憶喪失になったのか、教えてください。」
「…誰に聞いた?レッドが記憶喪失だと。」
「レッド先輩自身ッスよ。」
別にこれで断られても仕方ないと思っていた。
仮に嫌われていないとしても、彼に仲間だと思われている自信なんてないのだから。
“きっと、教えてくれるよ”
そんなイミテの言葉がやけに耳に残っていて、つい聞いてしまっただけだ。
パタン。
本を閉じる音がした。
「そうか。だったら話すべきなんだろうな。レッドに…いや、俺達に何があったのか。」
ゴールドの予想に反し、グリーンはゴールドの目を真っ直ぐに見て言った。
「少し長くなる。」
そう言って彼が語り始めた過去は、残酷で悲惨で、
…悲しいものだった。
全てを聞いて、ゴールドは、どこか悲しげな表情をうかべて苦笑して言った。
「だからイミテ先輩(あの人)は、あんなに優しく笑うんスかねえ…」
その痛みを知るからこそ
他人の痛みに共感できる
自分自身の古傷が
疼いているとも知らずに
.