22 痛みを知る者
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「今まではずっと、ブルーと2人で生きてきたのかもしれない。でも今は違う。」
仮面の男にさらわれたときから。
共に助け合い、2人で生きてきた。
「私達は皆、アナタ達の幸せを想ってるから。」
ブルーとシルバーに強い絆がうまれるのは当然だ。
でも…、
「自分達だけでなんとかしようなんて、それだけは絶対に思わないで。」
それはイミテの率直な気持ちだった。
(どうか、2人だけの世界に)
(すがりつかないで)
「…。」
シルバーは黙ったままだったが、ちゃんとイミテの言葉は聞いていたようだ。
イミテはそれに満足して、「ブルー、呼んでくるね。」と言って部屋を出て行った。
「(アイツ…)」
シルバーは彼女の言葉に何を思ったのだろうか?
「(気持ちわりい…)」
ゴールドは口元に手を当ててフラフラと甲板を歩いていた。
彼は今、軽く船酔い状態だ。
数十分前まで部屋で「はあー」とか「うー」とか言いながら気持ち悪さに耐えていたのだが、グリーンに「うるさい。」と一喝され、仕方なくこうして船内をうろついて気を紛らわせているのだ。
「くそ…、追い出さなくったっていいじゃねえか。」
もちろんゴールドも「仕方ないじゃないッスか!」などと言って反論したのたが、「騒いで船酔いが治るわけじゃない、大人しくしてろ。」と言われてしまっては返す言葉がなかった。
「(レッド先輩の部屋行くとグリーン先輩に後でうるさく言われそうだし、ブルー先輩は金とられそうだし、イミテ先輩達は1人部屋に2人だから俺が行くと確実に狭くなるしな…)」
要するに行く場所がない。
「おっ、わ…!」
ガンッと何かにつまづいて、ゴールドはよろけそうになった。
なんとか踏みとどまり振り返って確認すると、そこにあったのは鉄パイプ。
グレンタウンに運ぶものだろう。
今はもう夜で辺りは暗く、足元がよく見えないのだ。
「くそ!!」
さっきの出来事も重なってむしゃくしゃしながら彼は鉄パイプを蹴飛ばす。
すると思ったより強く力が入ってしまって、ガアアンと、結構大きな音が響いた。
「コラ!誰だ!!」
「(やっべ…!)」
船乗りの怒鳴り声が聞こえてきて、ゴールドはすぐさま逃げ出す。
盗賊をやっていただけあって彼の素早さは相当なもの。
船乗りからは、バレることなくなんなく逃げられたが…
「よけい悪化した…」
船酔いが。
近くにあった木箱に背中を預け、ズルズルとその場に座り込む。
「(どーすりゃいいんだよ、この気持ち悪さ。)」
彼は片膝をついて、はあー…と息を吐いた。
すると…
「その話…なんか聞いたことある。…あれ?どこで聞いたんだったっけ?」
「あ、その先は深く考えなくていいよ。頭痛が起きるかもしれないから。」
「ってことは、イミテから聞いたとか、イミテと一緒に聞いてたとかか?」
「うん…まあ、そんな感じ。」
「…悪い。」
「謝ることないのに。」
「(あ…)」
レッドとイミテの声がする。
話している内容がハッキリ聞こえるから近くにいるのだろう。
「で、その話、シルバーにしたの。」
「シルバー、どんな反応したんだ?」
「んー…ただ黙ってた。少しでも伝わってればいいんだけどね。力になりたいってこと。」
「シルバーも分かってるさ。きっと。」
そこには、ほのぼのとしたようなやわらかい雰囲気が流れていて。
「(どうすっか、これ。)」
ゴールドは声をかけるタイミングが分からずにいた。
さらにここから立ち去るにも気持ち悪くて立ち上がることが出来ず、結果的に盗み聞きしている感じになってしまっている。
「(ま、不可抗力っつーことで。すいません、レッド先輩、イミテ先輩。)」
…諦めることにした。
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