22 痛みを知る者
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数十分後戻ってきた船乗りはブルー達に、船には乗ってもいいが部屋は1人部屋が5つしか用意できない、と伝えた。
船はついさっき出航して、現在彼らは甲板にいる。
「部屋どうするか。5つってことは、2人のとこが2つできるな。」
「1人部屋なのに2人も入れるんスか?」
「寝袋もあるし、寝るだけなら問題ないだろ。」
「まず、絶対にシルバーは1人でしょ。」
シルバーはあれからいまだに目を覚まさない。
環境はできる限り静かなところがいいだろう。
「アタシも1人がいいわ。」
「ブルー、十分元気だろ。」
「まだ万全じゃないの。今は皆に余計な心配かけたくないから、元気なフリしてるだけ。」
「…。」
はたして心配かけたくないと言っている奴がそんなことを言うのだろうか?…と、レッドは疑問に思ったが、ここで何か言うとややこしくなりそうなので話を進める。
「私とイエローは2人でいいよ。イエロー、いい?」
「はい!もちろんです。」
「俺も、2人で、」
「レッド。お前は1人にしろ。」
レッドが言いかけたが、グリーンがそれを止めた。
「へ?」
「グレンタウンに着いてすぐにでも仮面の男と遭遇したことを考えると、お前がしっかり身体を休めるほうが効率がいい。」
「でもそれだと必然的にグリーンとゴールドが同じ部屋になるぜ?」
レッドが言った瞬間、「げっ。」と言う声が聞こえた。
…ゴールドだ。
彼はあわてて口をふさぐがもう遅い。
「仕方ないことだと割り切ればすむ話だ。」
それは先ほどブルーがイミテに言っていた内容。
確実にわざとだ。
言った本人とゴールド以外は思わずぷっと吹き出した。
「…。」
ゴールドは納得いかなそうに、眉間にシワを寄せていた。
シルバーの寝ている1人部屋。
イミテは彼を起こさないよう、静かに扉を開けて中に入った。
ベッドに横たわる彼は相変わらず時々「う…」と声をもらして、寝苦しそうにしている。
「(悪い夢でも見てるのかな。)」
イミテがスッとベッドの隅に腰かければ、かすかに軋む音がした。
すると、それに反応したのか、シルバーがゆっくりと目をあけた。
ぼうっとした顔でイミテを見て、ポツリとつぶやく。
「姉、さん…?」
イミテは思わず一瞬驚いてしまったが、すぐに優しく笑って言った。
「ブルーじゃないよ。ブルーは今、部屋で休んでる。」
「……」
「ブルーなら良かったんだけど…ごめんね。」
そこで意識がハッキリしたのか、シルバーがバッと飛び起きた。
「いっ…」
そして痛みに顔を歪める。
「まだ回復してないんだから、動いちゃダメだって。」
イミテが半ば強引にシルバーを寝かせる。
シルバーもまだ抵抗するだけの力がないのかされるがままだ。
「姉さんに怪我は?」
「ないよ。軽い傷はあったけど、イエローが治したから。」
「…そう、か。」
シルバーは額にに腕をあてて、ホッとしたように息をつく。
「覚えてるんだ?昨日のこと。」
「…ああ。」
昨日の出来事を思い出すと同時に悔しさもこみあげてきて、シルバーはギリッとそれをかみしめる。
「ブルー呼んでくる。」
彼女がいたほうが落ち着くだろうと思い、そう言って立ち上がったイミテだが…
シルバーが腕をつかみそれを止めた。
「まだいい。」
「…そう。」
成り行きでイミテは再びベッドの横に座る。
「…。」
「…。」
「…何か話せ。」
「何かってなにを?」
「なんでもいい。」
シルバーの答えにイミテは困ったように顔をしかめる。
ああ…もしかしてこれはよく子供が親に、寝る前に話をしてもらうのと同じようなものなのだろうか。
「(かわいいとこあるなあ…)」
「おい、今バカにしただろ。」
「別に?」
「…。」
イミテとシルバーは2人きりで話したことはあまりない。
まあ別行動をしていたのだから当然と言えば当然なのだが。
そのせいでまだ微妙な距離がある。
ただ、彼と過ごすこの雰囲気は居心地の悪いものではない…と、イミテは思った。
「じゃあ…私が昔よく聞かせてもらった話しでもしようか。」
「待て。昔って…子供向けの童話でもするつもりか。」
「うん。」
「やめろ。この歳になって…」
「こういうのって少し大人になってから聞くと、また感じ方が違っていいものだよ。」
そう微笑むイミテに、シルバーはなぜか何も言い返せなくなった。
イミテはそれを了承としたのか、静かに語るように話し始める。
「“少年は、幸せでした”」
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