21 たったひとつの天敵
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「とにかくアイツは敵だ!気を抜くなよ!」
レッドが忠告するが…
「……。」
レッドとグリーンがワタルに向けて武器を構えるその横を、イミテはスッと横切ってワタルに近づく。
「おい…!」
「この人は敵じゃないと思う。」
「!?」
「何言ってんだ!シルバーもブルーも攻撃されて、」
「でも、前は助けてくれた。」
そのときに感じたワタルの雰囲気は、どことなくやわらかくて。
それは不器用で不安定な…そんな感じだったけれど、イミテは、どうしても彼が敵だとは思えなかった。
「少なくとも、悪い人じゃない。確信は…ないけど…。」
イミテは弓を構えることもなく、ワタルとの距離が数メートルほどのところで足を止めた。
そして、問う。
「ねえ…アナタはなに?」
「………。」
ワタルがそれに応えるかのように無言のまま近づくが、やはりイミテは特に警戒をするわけでもなく、ただことの成り行きを見守る。
「イミテ…!」
ワタルはレッド達の前に現れたときから、剣を手に握っていた。
それは今も変わらず…。
このまま彼が攻撃すれば、イミテは抵抗する暇もない。
いくら彼女に俊敏性があるといっても、怪我なしというわけにはいかないだろう。
「…。」
それなのに、イミテは動かない。
何の、保障もないのに。
「っ…!」
剣の柄を握るレッドの手に、無意識のうちに力がこもる。
どうして彼女は1度助けられただけなのに、そこまで信じているのか。
“俺がイミテを守るからさ”
「!?」
突然、ぼんやりと頭の中で響いた言葉。
「(なんだ、今の―…)」
自分はそんなセリフを言ったことがあっただろうか?
いや、記憶にない。
でも、頭に響いたそれはまぎれもなく自分自身の声だった。
記憶にない。
覚えていない。
でも―……
それはたしかに、
心の奥深くにしまいこんでいた
とても大切な想いをよみがえらせるような
そんな、大切な言葉で…
「っ!」
その言葉にうながされたかのように、レッドの足は自然と動いていた。
そして手を伸ばせばもう届く距離にあるイミテとワタルの間に、バッと、イミテをかばうようにして立つ。
それは、誰もが驚くようなスピードだった。
「レッド…?」
「イミテに近づくな!」
そのときのレッドの雰囲気は、普段はの彼からは想像できないような、まるで刃物のように鋭くとがった感じで…。
近くにいたグリーンとゴールドも、少し離れた場所にいるイエローも……そして、彼の真後ろにいるイミテも。
「消えろ。今すぐ。」
誰もがごくりと息をのんだ。
「…別に、お前らに進んで危害をくわえるつもりはない。そいつらも、不利な能力で仮面の男に立ち向かおうとしてたから、少し手合わせしてやっただけだ。」
「不利な能力か。だったら、これなら文句ないだろ?」
レッドは剣の切っ先にボウッと小さな炎を宿す。
「!お前も能力者…。炎の能力か。フン、おもしろい。炎と氷なら、万が一ということもあり得る。」
ワタルは少々バカにしたような笑みをうかべるが、レッドは厳しい表情を変えない。
「せいぜい返り討ちにあわないようにするんだな。」
ワタルは自身のマントをバッとひるがえすと、沿岸沿いにさっそうと歩き出す。
「(…深追いはしないほうがいいか。)」
レッドがその背中を見送っているのを、イミテは少々驚いた様子で見ていた。
さっきはすごい剣幕だったのに、今こんなにも冷静でいることが不思議だったのだ。
特に逆上したわけではないらしい。
なにに対してあんなに必死になっていたのだろう…とイミテは首を傾げた。
「たく、イミテは無防備すぎ。敵じゃないって保障はないんだか、もっと警戒しろよ。」
「あ…うん。」
やっぱりその口調は落ち着いていて、イミテは戸惑う。
そんな彼女の頭をレッドはくしゃりと撫でた。
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