21 たったひとつの天敵
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「シオンタウンの1つ前の町で、俺とレッド先輩同じ部屋だったんで、そのときに。」
「驚いたでしょう?レッド、ゴールドが仲間になってからはそんな素振り見せてなかったし。」
「…そうッスね。」
「それで…、」とほんの少し口ごもったゴールド。
イミテは察したように言う。
「私に聞こうと思ったの?レッドが記憶喪失になった理由を。」
彼は真剣な表情で「はい。」と頷いた。
「レッド先輩、忘れてるのはイミテ先輩のことだけって言ってたんスよ。…なにがあったんスか?」
忘れているのはたったひとつ。
たった1人の女の子。
それなのに、すごく心が苦しくなる。
イミテの存在と一緒に、絶対に忘れてはいけないはずだった大切な何かを忘れてしまった気がする。
ゴールドに話したとき、レッドはそんなことを言っていた。
すごく、苦しそうな表情で。
「…ゴールドはどこまで聞いた?」
「え?」
「レッドとグリーンがマサラタウン出身だってことは?聞いたの?」
「はい。いつも一緒に修行してたって。」
「…そう。私もね、そこにいたの。私も…マサラタウン出身だから。」
レッドの記憶には残っていない。
でも、たしかに彼女はそこにいた。
共に、同じ世界を生きていた。
もちろんレッドはイミテのことを覚えていないわけだから、ゴールドもそのことは聞いていなくて。
「へ…?」と思わず聞き返した彼に、イミテは綺麗に笑って言った。
「そうだなあ…、詳しいことはグリーンに聞いて。」
「なんでグリーン先輩なんスか。嫌ッスよ。どうせ嫌み言われるのがオチだし。」
そう言ってゴールドはすねたようにそっぽを向く。
イミテも変なところで意地が悪い。
知ってるなら教えてくれればいいのに、…と。
「グリーンは不器用なとこあるけど、仲間を邪険にしたりはしない。きっと、教えてくれるよ。」
「…。」
イミテは自分とグリーンの仲を少しでも改善しようとしているのかもしれない。
決して、グリーンのことは苦手じゃない。
ただ何かと言い方が気にくわなくて衝突してしまうだけで、現に旅をする中で、すげー考え方するなあ…なんて、尊敬する場面も多々あった。
「…気が向いたら聞いてみるッス。」
素直になるのはどことなく恥ずかしくて、相変わらず視線をそらしたまま言ったゴールドを、イミテはクスッと笑った。
「さて…と。話してるうちに港についたね。」
イミテの言うとおり、目の前には海がありポツンポツンと一定の間隔をあけて船が停泊している。
…が、やけに人が少ない。
「船乗りとかこの時間、いないもんなの?町の人すら見当たらないけど。」
「おっかしーな。俺が前来たときはもっと人であふれてたんスけど…」
すると丁度そのとき一隻の船から船乗りらしき格好をした人がでてきた。
しめたと言わんばかりに、ゴールドはその人に駆け寄る。
「すいませーん。この辺で、黒髪の男と茶髪の男、あと金髪の女の子の3人組見ませんでしたか?」
「ん?ああ。さっきの子達のことかな?やけに男の子達の髪型が特徴的だったけど。」
「あー…間違いなくその人達ッス。」
「どっちに行ったか教えていただけますか?」
「沿岸にそって、ずーっと向こうに歩いていったよ。」
そう言い、船乗りは遠くのほうを指差す。
その先には大きな一際目立つ船があった。
とりあえずイミテ達は船乗りに教えてもらった道を辿った。
沿岸にそって歩くにつれ、どんどん町からは離れていき殺風景になってくる。
「あ。」
しばらく歩いて、数十メートル先にレッドの姿を見つけたイミテ。
思わず声をあげた。
「ラッキー!探す手間がはぶけた!レッド先ぱ「待って!」
大声でレッドを呼ぼうとしたゴールドを、イミテがさえぎる。
「…様子がおかしい。」
「へ…?」
港に止まっている大きな船が邪魔して確認できないが、レッドは何かと対峙しているようだった。
断定はできないが、確実に、緊迫した空気があたりを渦巻いていたのだ。
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