02 揺れる金は儚くて
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「復讐するためには、今よりももっと力が必要だから…。この国の軍人になれば力が手に入って、そして…王を殺す機会もグッと増える。」
「だから、性別を偽ってまで軍に入ったってわけ?」
「はい。女は追い返されることは目に見えてましたから。」
たしかにこの国の軍隊に女はイミテしかいない。
よっぽど優れた能力がないかぎり、女は軍人にはなれないだろう。
「イエロー、たしかにここにいれば力も、王に近づく機会も手に入る。でも、周りからは『王の考えを理解して、だから手下になった』って思われるんだよ?」
「え…?」
「イエローの1番憎んでいる人の、仲間だと思われる。王と、同類だと思われる。それでもいいの?」
イエローは自分とは違う。
無理矢理この場所に連れてこられたわけでもなく、今ならまだ、後戻りができる。
血の匂いがしみこんだ城壁や、人を殺すために作られた武器に囲まれるこんなところよりも、
明るい太陽の光がふりそそぐところで生きてほしい。
自らこの世界に飛び込んでほしくはない。
イミテは、そう思っていた。
でも、
「…強くなりたいんです。どんな手段を使っても。」
イエローの決心は固かった。
迷いは、ないようだ。
「(だったら、私ができることは…。)じゃあ、イエローが強くなるまで、私が面倒みる。」
「!イミテさ、」
「でも1つ約束して。勝手な行動はしないこと。」
「え…」
「何かをやる前は、必ず私に言う。もちろん復讐の時も、ね。いい?」
「はい…!」
優しい表情とともにそう言ったイミテに、イエローは2つ返事でうなずいた。
イエローは、気づいていなかった。
この約束に、
「(イエローだけには背負わせない。復讐の時がきたら、私が…)」
イミテのそんな思いが隠れていたなんて。
イエローが城に来てから数日後。
「もっと右足をひいてから、力を一点にこめて!」
「はいっ!」
イミテの言葉に返事を返し、イエローはバッと足をあげて回し蹴りをする。
スパアンという音が辺りに響いて、木が少し削れた。
あれからずっとイミテの指導をうけていたイエローは、ある程度の護身術は使えるようになっていた。
イミテの武器は主に弓矢なのだが、実は武術も少しなら使える。
武器が手元にない時でも侵入者を捕まえられるように、と、王がタケシに命令して指導させたからだ。
…まあ、その時誰もが、王はイミテをとことん利用する気だと悟ったのだが。
それに気づいていながらもイミテは、武術も習っておいて損はないとすんなり受け入れた。
「だいぶ上達したね、イエロー。」
「えへへ。イミテさんのおかげです。」
照れくさそうに笑ったイエローに、イミテも笑みをうかべて言う。
「これで、新人考査もなんとかなるかな。」
「?新人、考査…?何ですか、それ?」
2人の間に沈黙が流れ、やがてイミテは頭をかかえた。
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