21 たったひとつの天敵
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「…まあいい。処分はあとで下す。今日はこれでいったん引き上げる。行くぞ、クリス。」
すると、ナツメの言葉を聞いたゴールドが「あっれー?」と、いかにもバカにしたような声をあげた。
「なんで逃げようとしてんだよ。」
「ただ、お前の相手をする時間がおしいだけだ。」
「はっ。よく言うぜ。イミテ先輩が負けたっていうの、嘘なんだろ?お前は何らかの方法でイミテ先輩から逃げて、ここまで来た。だから一刻も早くここから立ち去りたい。違うか?」
「…。」
言葉を発しないナツメに「図星だな。」と、ゴールドは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「あと、お前、俺とそこのクリスってヤツが親しくなったとか言ってるけど、それもハズレだぜ?」
ゴールドは言いながら、一瞬で、棍棒を軽くふった。
電流が一直線にクリスのもとに向かう。
クリスもナツメもとっさのことに対応できずに、クリスの腕に電流がピッと触れた。
「だから、余裕で攻撃できるっつーの。そいつが傷ついてもなんとも思わねえし。」
クリスの腕は切れて血がツーと一筋たれた。
「っ…」
クリスは痛みに顔を歪める。
「…それを判断するのはお前じゃない。私だ。」
直後、ぶわあ…と風が吹き、ナツメとクリスは闇に消えた。
「!逃がすか…!」
ゴールドはすぐさま追いかけようとしたが、後ろから聞こえた階段を昇る足音に自身の足を止めた。
「ゴールド!」
やがて、やや息をきらして現れたのはイミテで。
「イミテ先輩!よかった!やっぱり無事だったんスね!」
「ゴールドも…怪我してないみたいね。よかった。」
イミテはほっと息をつく。
「!イミテ先輩、それ…」
ゴールドはイミテの腕にできた切り傷を見て眉間にシワをよせる。
ナツメにガラスの破片をとばされたときにできた傷だ。
「見た目以上に浅いから心配しないで。それより、こっちにナツメが逃げて来なかった?」
「さっきまでいたんスけど、またどこかに逃げていきましたよ。…アイツと一緒に。」
ギリッと悔しさを噛みしめるゴールド。
クリスはやはり、これからも国の言いなりになり続けるのだろう。
クリスの話では政府は契約期間がきたら彼女を解放すると言っていたが、彼らは一度手に入れたものを手放すような奴らじゃない。
クリスは彼らの手の内でまんまと踊らされている。
そして、それはこれからも続いていくだろう。
おそらく、永遠に。
「イミテ!ゴールド!!」
自分達の名前を呼ぶ声が聞こえて振り返れば、レッド達がいた。
「たく、1人で突っ走るなよ。」
「あー…ごめん。ナツメとゴールドが戦うことになったらまずいと思って…、つい。」
「?物理攻撃が効かないからッスか?」
「それ以外に、理由があるの。」
イミテは一拍おいて、言う。
「ナツメがどんな力をもってるのかが分かった。あと弓が不自然に動いたこと、グリーンが操られた理由もね。」
ナツメには超能力があり無生物を操れること、クリスは生物全般を操れることを説明した。
そのあとゴールドがクリスは風の能力者であることを補足する。
「ってことは、ナツメにはイミテ以外の能力は通用しないな…。」
レッドは炎、グリーンは大地、ゴールドは電気。
生物ではなく無機質な物質だから、どれも超能力で操れる対象だ。
「手に持ってれば武器は操れないから、能力を使わない攻撃はできるけど…」
「打撃攻撃が効かないんだから意味ないッスよね。」
「まともに太刀打ちできるのはイミテだけってことか。」
レッドは顔をしかめてイミテに目をやる。
おそらく心配しているのだろう。
次にナツメに会ったら、必然的にイミテが戦うしかなくなるのだから。
「これで少しは具体的な対策がたてられるね。」
そんなレッドの心情を知ってか知らずか、イミテは笑顔で言った。
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