21 たったひとつの天敵
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ナツメに冷たい視線を向けられたクリスはごくりと息をのむ。
しばらく張りつめた緊迫感が彼らがいる空間を支配していた。
それをやぶったのはゴールドだった。
「何でお前が、ここに…。イミテ先輩はどうしたんだよ!?」
動揺と不安から、思わず大声になる。
ナツメのことは、イミテが足止めしていたはずだ。
では、ナツメがここに来たということは何を意味しているのか。
ゴールドは最悪の事態を予想してしまい、不安にかられる。
「緑の能力者のことか。フフ…、口ほどにもなかった。」
「!(イミテ先輩が…負けた!?)」
…そんなはずない、落ち着け。
ゴールドは必死に、そう自分に言い聞かせて、平静を保とうとする。
「クリス。お前、自分のおかれている状況を忘れたのか?」
そんなゴールドを後目に、ナツメはクリスに冷たい視線を向ける。
「…ち、違うんです…!つい、油断して、それで…!」
口を開いたクリスからでたのは、震えたか細い声。
「今さら言い訳とは見苦しいぞ。戦いもせずに世間話をしていただろう。もうミナキの命はないと思え。」
「ま、まって!違、」
「…。へー。お前、人質とられてんのか。」
「(え…?)」
ゴールドが棍棒を手に立ち上がり、ニヤリと笑みをうかべて言う。
クリスから事情を何も聞いていないフリをして。
「やっぱ汚いことすんなー。というか、だいたいその人質、生きてんのか?」
「な…!生きてるわよ!絶対!」
思わず声をあげたクリスの目の前に、ゴールドは棍棒を構えて言う。
「お前には聞いてねえ。黙ってろ。」
「!」
さっき話しをしていたときとは違う、殺気さえ感じるその話しぶりにクリスはぶるっと震えた。
「…お前に話す義務はない。」
ナツメはいかにもめんどくさそうに答える。
「答えないってことはお前ら、もうそいつのこと殺したんだろ。」
「…。」
黙ったままのナツメに、クリスの顔がこわばる。
「(うそ…ほんとに、ミナキさん、は…)…ナツメ、様…」
呆然としながらつぶやいたクリスにチラリと目をやり、ナツメははあとため息をついて言う。
「生かしておかなければ人質の意味がないだろう。」
「!」
今度はクリスがほっと、安堵のため息をついた。
…まあ、ナツメの言葉が真実かどうか確信はどこにもないのだが。
「どんな理由があるにせよ、仲間を傷つけたことに代わりはねえ。覚悟しやがれ!」
「え…」
ゴールドは勢いよくそう言って、クリスに向けて棍棒を振り下ろした。
…が、目の前からクリスの姿が消える。
「!」
気づけば、元いた場所から数メートル離れたところにクリスの姿があった。
彼女の隣にはナツメが腕を組んで立っていて…。
「お前の仕業かよ。次は逃がさねえ。」
ゴールドはまた、棍棒を構えて言う。
「そんなことで騙せるとでも思っているのか?」
「は?」
「演技だろう、今の攻撃。もし私が助けにはいらなくても棍棒がクリスに当たらないように、お前は標準を少しずらして攻撃していた。」
「はあ?なんで俺が敵にそんなことしなきゃいけねーんだよ。」
ゴールドは意味が分からないと言ったように顔をしかめる。
でも実際は、ナツメの言ったことは図星で内心、ギクリとしていた。
今の彼の一連の行動はすべて演技だ。
少しでもなれ合っていないとナツメに見せて、クリスがバツをうけないようにするための。
「かばわれるほど親しくなったのか、クリス。」
「ち、違います…!」
「(チッ…)」
ゴールドの行動は裏目にでてしまったようだ。
.