20 信じるチカラ
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「……今はその契約をしてから2年がたった。あと3年、協力すれば…私もミナキさんも自由になれる。」
「………。」
「だから私はナツメ様の言うことを聞いているの。本当はこんなことしたくないけど…でもあと少しの我慢だから…、!」
クリスは途中で言葉をとめた。
いや、言葉が出てこなくなったなったのだ。
ゴールドが自分を軽蔑するような目で見ていたから。
「…本気で思ってんのか?」
「え…?」
「政府が、軍が…約束を守るって、本当に思ってんのかよ!?」
「思ってるわ!」
クリスが強い口調で反論すれば、ゴールドの目つきはよりいっそう厳しいものになった。
「バッカじゃねえの?アイツらの無情さも知らないのに、よくそんな確信もないこと言えるよな!」
ゴールドはイラついていた。
なにしろ彼自身が軍に裏切られた経験があるため、政府の言葉をうのみにしているクリスが全く理解できないのだ。
「アナタには関係ないでしょう!?」
「関係あるに決まってんだろ!お前の能力のせいでこっちはいろいろ迷惑してんだよ!」
「何なのよ、その言い方!やっぱりアナタになんか話すんじゃなかった!」
いつの間にか喧嘩になっている。
ゴールドもそれに気づき、バツが悪そうに顔をそむけて言った。
「…俺はちょっと前まで盗賊だったから、政府とか軍とかがどんなことをやってきたか大体噂で聞いてんだ。それに俺自身も、経験した。」
「……。」
「ろくな奴らじゃねえ。人を傷つけてもなんとも思わねえし、民衆との約束なんて平気でやぶる。だから、お前との約束だってきっと」
「そんなこと言わないで!!」
大声に驚いてそっちを向くと、クリスが目に涙をうかべていた。
「私だって…なんとなくだけど分かってるわ。あの人達が約束を守るはずがないって…。」
「だったら、」
「でも!!それでも私はこれにすがるしかないの!ミナキさんの人生を狂わせたのは…私なんだもの。」
ミナキがクリスと出会わなければ、彼が今、牢屋に閉じ込められることもなかった。
ゆえに、クリスは自分のせいだと感じているのだ。
「だからなんとかして彼を救いたい。少しでも望みがあるのなら、私は…それにかける。」
静かに涙を流しながら、クリスはそう言った。
その言葉には彼女の決意がにじみでている。
クリスは何としてでもミナキを救うつもりだ。
そう、あの日、胸に刻んだのだ。
…彼を助けるためなら、どんなことでもすると。
例えそれが誰かを傷つけるようなことだとしても…。
「…クリス、落ち着いて、もっと冷静になって考えろ。政府の言いなりにならなくたって他に方法が…。…っ!」
「…?なに?」
ゴールドの顔が険しくなったことに気づき、クリスは涙をぬぐって、首をかしげる。
「しっ!」
ゴールドが口元に指をもってきて、黙るようにうながした。
そんな彼の様子に冷や汗が、体を伝う。
やがて、音が聞こえてきた。
コツコツ。
コツコツ、と。
高い靴の音が響く。
「…クリス。私はそいつを始末しろと言ったはずだが?」
「!ナツメ、様…、」
悪魔のささやきのように。
信じたい
たとえ偽りだと分かっていても
強く信じていれば、
いつか奇跡がおこるのだろうか
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