20 信じるチカラ
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「…君は、能力者を知っているか?」
ミナキは突然、そんなことを口にした。
「?…ええ。少しだけど、聞いたことはある。普通の人とは違う能力を持った人達のことでしょう?皆、能力者は化け物だから近づくなって言ってたわ。」
クリスは何の話しが始まるのかと不思議に思いながらも答える。
「化け物、か…。…政府は彼らを捕らえて王に仕えさせ、その力を自分達の支配下いれている。…どう思う?」
「どう思うって…。」
「少し変わった能力があるだけで、他は普通と変わらないんだ。だけど、自由を奪われる。政府の気まぐれだけで希望も夢も全て奪われるんだ。」
「……。」
「私はどうしても許せなかった。それを止めたくて、政府に…軍に入ったんだよ。密偵の目的でね。」
ミナキは苦笑いをうかべた。
「希望通り能力者を捕まえる役職に配属されたが、私の力なんてたかがしれていて、その行い自体を止めることはできなかった。だから…、親友に頼んだんだ。」
「親友…」
「ああ。マツバという、唯一信頼できる私の心の友だよ。彼は不思議な力をもっている。」
「もしかしてその人も能力者…?」
「いや、彼は違う。千里眼という、全てを見通す目を持っているんだ。そして私はマツバに能力者について調べてもらった。」
「…能力者がいる場所について?」
クリスは思わずそう聞いた。
たしかに場所が分かれば、そこをなるべく避ければいい。
しかし、「もっと根本的なことだよ。」と、ミナキは首を横にふった。
「実は、能力者は初めから能力を使えるものは少ないんだ。何か強い思いがあって初めて、その能力を媒介を通して発揮する。」
「媒介って?」
「剣や槍、仏具など…とにかくその能力と個人に最も適した道具だ。」
能力者がその能力を発揮する条件は2つ。
本人の強い思いと、適した媒介だ。
どちらか1つが欠けていては何も起こらない。
…まあ、1度その能力を発揮してしまえば、媒介があるかぎりいつでも能力を使うことができるのだが。
「だから私はマツバに、まだ能力が目覚めていない能力者について調べてもらった。さすがに人物の特定はできなかったが、その人が住んでいる町と媒介は分かったよ。」
「…なるほど。」
その町に行って、能力者を媒介から遠ざけておけば能力は目覚めない。
つまりミナキは、能力者の能力が開化することを事前にふせごうとしたのだ。
能力がなければ政府も彼らを捕らえようとは思わないから、普通の生活が送れる。
「つい先日もマツバに調べてもらって…ここ、キキョウシティに能力者となる可能性のあるものがいることが分かった。」
「まさか…!この町に…。」
「信じがたいとは思うが、間違いない。今までマツバの予想ははずれたことがないんだ。そして今回の媒介は…札らしい。」
「札…?あ!」
そういえば昨日、ミナキが札を落としてやけにあわてていたことを、クリスは思い出した。
「だから私がキキョウシティに来たのは、決して君達をだますためじゃない。ただ…能力者を救いたかったんだ。」
「……。」
「これ以上の犠牲者はだしたくなかった。だから私はここに来たんだ。…信じてくれ、クリス。」
月明かりが、ぼんやりと2人を照らした。
「(月…)」
そして、クリスは思い出す。
“月は不安と疑惑を表す。”
“大切なのは誰かに相談して、その不安や疑念を取り除くことだ。…私でよければいつでも話しを聞くよ。”
自分が不安にむしばまれていた時に、そんな優しい言葉をくれたのは、彼だということを。
その言葉は偽りなんかじゃない、すごく温かいものだったということを。
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