20 信じるチカラ
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「さて、無駄話しはここまでだ。金がないならさっさと子供達を渡してもらおう。」
「ま、待って…!」
「なにを今さら。」
フッと笑って足を進めようとした男を見て、ジョバンニはある物を取り出した。
それを見た男は、ピタリと足を止める。
「…ジョバンニ殿?どういうつもりだい?」
ジョバンニが手にしているのは……手榴弾。
「手荒なまねをするというのなら、これを爆発させるアルよ。」
「そんなことしたら、ジョバンニ殿もただではすまないと思うが?」
「……覚悟はしてるアル。」
いつも穏やかな性格のジョバンニからは考えられないような、殺気がこもった雰囲気がただよっていた。
「クリスさん!早く!」
「え…、」
「さっき私が言ったことをして!早く!中へ!!」
「……っ!」
その強い口調からジョバンニの意志を感じ、クリスはの足は気がついたら動いていた。
塾の中へ向かって。
ガララ!と勢いよくドアを開けると、部屋の中にいた子供達がいっせいにクリスの方を見た。
「クリス姉ちゃん、そんなにあわててどうした、」
「皆!ここから出るわよ!早く…っ!」
「なんで、」
「お願い!早く…!」
「「「…。」」」
少し目がうるんでいるクリスに、子供達は何も聞けなかった。
その後、クリスはジョバンニに言われた通り裏口から出て西へと向かった。
子供達とひたすら森の中を進む―…。
もうすっかり日が落ちて、辺りは真っ暗だ。
「クリス姉ちゃん、どこまで行くの?」
「暗いし、怖いよ…。」
「ジョバンニ先生は?」
それぞれ思い思いにつぶやく子供達。
しかし、クリスは終始無言だ。
「ねえ…どうして泣いてるの?」
「…!」
1人の生徒が言ったその言葉に、クリスはピタリと足をとめる。
その様子を見て、子供達が心配するようにクリスの顔をのぞきこんだ。
「ホントだ!クリスお姉ちゃん、泣いてる…。」
「どこか痛いの?ケガしたの?」
「大丈夫?クリス姉ちゃん…。」
「皆……。」
そんな子供達の優しさに、クリスはこらえていたものをはきだすように涙を流した。
「うん…。すごく…痛いの。」
「だいじょうぶ!?どこが痛いの!?」
「……心が…。」
「こころ…?」
心が、痛い。
自分を犠牲にしてまで皆を守ってくれたジョバンニ。
彼があの後どうなったのかを考えると、胸が張り裂けそうな思いになる。
そして、ミナキは何者なのか。
彼を信じていいのか。
…できることなら信じたい。
でも、あの男の言うとおりミナキが政府の人間だとしたら…妙につじつまが合ってしまうのだ。
自分のことは何も聞かないでくれと彼は言った。
もしそれが、政府とのつながりがバレるのを恐れて言ったことだとしたら…。
「(でも、彼は私達のためにお金をたてかえてくれると言った…。)」
そんなことをして彼には何の意味があるというのだろうか?
「(!まさか…)」
クリスは、ハッとした。
もしかしたら、ミナキは自分達の絶望する姿を見るために、そんなことを言ったのではないだろうか。
1度は希望をもたせておいて、それを裏切る。
絶望のどん底に突き落とし、それを見て楽しむのが目的だったのかもしれない。
そうだとしたら…、
「(ジョバンニ先生の犠牲は無意味だったってこと…!?最期までミナキさんを信じていた、彼の犠牲は…!)」
クリスはやりきれない気持ちになって、ギュッと拳をにぎった。
あまりに強く握ったため、その手のひらに爪がくいこんでうっすらと血がにじむ。
…痛い。
でもこうでもしないと、押しつぶされてしまいそうなんだ。
ズシリとのしかかる、心の痛さに…。
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