20 信じるチカラ
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ははは!油断したのが運のつきだな。」
「あ……!」
見ればナツメを捕らえていた蔓は焼け落ちていた。
おそらくイミテが攻撃を防いだすきに、自らにも超能力で炎をとばしたのだろう。
ふわりとナツメの体が宙に浮く。
「緑の能力者か…。思わぬ天敵がいたものだ。今回は見逃してやる。」
「!逃がさない!」
イミテが弓を撃ち、蔓がナツメをとらえようとそこから勢いよく伸びる。
しかし、その前にナツメはフッと消えた。
「あれがナツメか…。」
グリーンはポツリとつぶやく。
彼は以前操られていて記憶がないため、ナツメを見るのは初めてなのだ。
「どこ行ったんだ!?アイツ…」
「!来て!たぶんゴールドのところだから!」
「あ…イミテさん!」
ダッと駆け出したイミテに説明を聞く暇もなく、やむを得ずレッド達も後を追った。
「私達は、結局ミナキさんの言った案に甘えることにしたの。」
下の階でそんな騒動が起きている一方、クリスは話しを続けていた。
ゴールドは自分の膝に肘をつきながら、彼女の話しを聞いている。
「で、何だ?ミナキが金をたてかえて、一件落着ってか?」
「……政府は、そんなに甘くはなかったわ。」
ゴールドの言葉に、クリスは深刻な面もちで首を横にふって、そう言った。
政府が罰則金を回収しにくる…いや、子供達を捕まえにくる期限は明日に迫っていた。
その日の早朝、ミナキはお気に入りのマントを羽織り塾の門の前にいた。
そんな彼を見送るのは、クリスとジョバンニの2人。
子供達はまだ寝ているため、いつもはにぎやかな塾も静寂をたもっている。
「さて…では、行ってくる。」
どうやらミナキはお金を用意するために、どこかに行くらしい。
そんな彼を、クリスは表情を曇らせたまま見つめていた。
彼女の様子に気づいたミナキは、やわらかく笑いかける。
「クリス、心配しなくても平気だ。明日までには必ず金を持って帰ってくる。」
「…私はそこを心配してるんじゃなくて…。こんな大金1日で用意して…ミナキさん自身は本当に大丈夫なんですか…?後で何か危ない仕事させられたりとか…」
「はは、クリスは心配性だな。昨日も言っただろ?大丈夫。私自身も無傷で帰ってくると約束しよう。じゃあな。」
ミナキはそう言うと、マントをひるがえして歩き出した。
「………」
クリスはただ黙ってその後ろ姿を見つめる。
ミナキは何者なのか。
どこに行くつもりなのか。
どうやってお金を手に入れようとしているのか。
聞きたいことは山ほどあったが、何1つ言葉にはだせないでいた。
『金をたてかえる際の条件として…私のことは何も詮索しないと約束してくれ。』
昨晩、そうミナキに言われたからだ。
思わず、何か人に知られるとマズいことをしているのかと疑いたくなるような発言だが、クリスはそれを受け入れざるを得なかった。
子供達を救える可能性があるのは、もはや、ミナキだけなのだ。
彼に全てをたくすしかない。
「クリスさん。きっと大丈夫アルよ。彼を信じましょう。」
ジョバンニがポン、とクリスの肩をたたいて言った。
「……はい。」
クリスも力強く頷く。
信じたい。
何者かは分からないけれど、彼は自分を温かく励ましてくれたから。
―……信じよう、彼を。
.