19 ひと時の幻想を
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「そうですか…。政府のものが…。」
一通りの話を聞き、ジョバンニはつぶやくように言った。
「あと2日しかないんです!何か策を考えないと、子供達が…!」
「……しかし、これほどの大金をあと2日で集めるというのは…無理アルよ。」
「でも!このままじゃ「クリスさん。」
ジョバンニはクリスの言葉をさえぎり、重々しく口をひらいた。
「孤児達は…施設に預けるアル。これからは普通に塾としてここを経営して行こうと思いマス。」
「!そんな……!」
「ずっと考えていたアルよ。クリスさんも気づいてると思いますが、この塾の経営状態はとても厳しいデス。」
「……はい。」
「正直、このまま続けていくのは厳しいアル。……いい機会かもしれません。」
「……。」
クリスは黙りこんだ。
ジョバンニの言う通りだ。
たとえ今回乗り切れたとしても、また同じことが起きるだろう。
「私は、今まで子供達を助けたいという思いだけでやってきましたが、中途半端で終わってしまいました。……しょせん、偽善にしかすぎなかったのかも知れないデス…。」
遠い目をして悲しげに話すジョバンニ。
「そんなこと……」
クリスは否定したかったが、言葉が思いつかなくて俯いた。
ジョバンニの行動が偽善でないことは分かっている。
彼は本当に心から子供達のことを愛しているのだ。
でも、なんと言えばいいのか―……。
今は何を言っても、彼を傷つけてしまいそうだ。
「………っ、」
自分の非力さに、クリスはギュッと握り拳をつくった。
そして、
「………。」
彼らの会話を聞いて複雑そうな顔を浮かべるものが、もう1人…。
ジョバンニと話を終え、外に出たクリス。
辺りは暗く、空には星が輝いている。
他にも、子供達になんと説明するか、最後に楽しい思い出を作ってやれないか…など、いろいろ相談していたらすっかり時間がたってしまったのだ。
「偽善、か…。」
クリスはポツリとつぶやいた。
ジョバンニがやっていることが偽善ととられてしまうのなら、クリスの行動もまた偽善に違いない。
「(私が今までしてきたことは、一体なんだったんだろう…っ)」
クリスは固く、拳をにぎった。
「クリス。」
突然呼ばれた自分の名前に、ドキリ、とクリスの胸は高鳴る。
おそるおそる振り返ってみれば、そこには優しい笑みをうかべているミナキがいた。
「あ…ミナキさん。子供達は…?」
「ああ。もう夜も遅いし寝かしつけておいたよ。」
「ありがとうございます。すいません、大変だったでしょう?」
「正直、クタクタだ。私の言うことなんて全く聞こうとしないぞ、あいつらは。呼び集めるのにも一苦労だ。」
疲れきった表情をしたミナキに、クリスは思わず苦笑いをする。
「…クリス。君はすごいな。」
「え?」
「子供達にしたわれて、彼らが衣食住に不自由しないようにきちんと世話をしている。」
「………。」
「並大抵の人間はきっとそこまでできない。本当に彼らのことが好きだからこそ、クリスにはそれができるんだろう?」
「……。」
クリスはうつむき、黙りこむ。
そんな彼女にかいま見得るのは、暗い負の感情…。
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