19 ひと時の幻想を
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「…よし!それじゃあ私もこの塾の経営を手伝おう。」
「え?アナタが!?」
「ああ。子供は好きだし、力仕事なら君よりはできるし、…まああとはお得意の手品で柵の修理代もあっという間に稼いでやるさ。」
ミナキは腕まくりまでして、やる気まんまんといった様子だ。
「その変わりと言っては何だが…。」
「はい?」
「私は旅をしていてね。寝泊まりする場所がないんだ。……というわけで、修理代を集める間、ここに寝泊まりさせてもらうよ。」
ガシッとクリスの肩をつかみそう言ったミナキ。
「え……(大丈夫かしら…この人;)」
クリスは何だか先のことが心配になり、深いため息をついたのだった。
「ずいぶん図々しい奴だな。そのミナキって奴は。」
ゴールドは一連の話しを聞いてポツリとつぶやいた。
「まあ今考えれば、私達のこと心配してくれたんだと思うけどね。」
「ふーん。怪しいと思わなかったのかよ?見ず知らずの奴が急に寝泊まりさせてくれ、って言うなんて。」
「たしかに最初は疑ってたけど、でも一緒にいてすぐ思ったわ。悪い人じゃないって。……子供達に見せた表情が、とても優しかったから。」
まるで懐かしむようにどこか遠くを見て話すクリス。
それを見てゴールドは思わずたずねた。
「好きなのか?そいつのこと。」
「な、何でそうなるのよ!」
「いや、なんとなく。その焦りよう…図星か?」
ニッと笑うゴールドに「……そんなんじゃないわよ。」とクリスは乾いた口調で言った。
「私はミナキさんに感謝とか申し訳ない気持ちとかでいっぱいだけど……、きっと彼は私なんかと会わなければよかったって思ってるはずよ。」
「?」
「私がミナキさんの人生を狂わせてしまったんだから…。」
ミナキが塾で寝泊まりをし始めて数日がたった。
彼は宣言通り、子供達の遊び相手をしたり、屋根の修理をしたり、時々町でマジックをしてはお金を稼いでいる。
この塾の職員はジョバンニとクリスのみ。
しかもジョバンニは隣町に行ったっきりまだ帰ってこないので、正直言って助かっていた。
「ふう…。」
しかし状況が悪いのは相変わらずで、クリスは1つため息をついた。
政府との約束の日が、あと2日に迫っていたのだ。
あれからクリスなりにいろいろ考えたのだが、お金を借りられる手段も、短期間で大金がかせげる手段もない。
結局、解決策は思い浮かばなかった。
「早くジョバンニさん帰ってこないかしら…。」
とにかく何とかして策をたてなければ、子供達は施設に連れて行かれてしまう。
クリスはまたため息をついた。
「クリス。どうした?ため息ばかりついて。」
「あ…いえ、何でもないです。」
心配して声をかけてきたミナキに向けてクリスはニコリと明るい笑顔をつくる。
「今日はもう町に行ったんですか?」
「いや、これから行くところだ。それで、クリスに相談があってね。」
「相談?」
クリスが聞き返せばミナキは「ああ!」と大きく頷き、どこからか2枚のマントを取り出した。
「今日の衣装は赤と緑、どっちがいいだろうか?なあ、クリス。」
「…どうでもいいです。」
「ど……!」
「それにしても、いつ見てもハデな色のマントばかりですね。」
「そりゃあ手品師はいつでも人の視線を集めていなきゃいけないからね。こんなふうに!」
ミナキがそう言ったと同時に、緑のほうのマントからポンという小さな爆発とともに、ひらりと1枚のカードが舞った。
ミナキはそれを手に取り、クリスに手渡す。
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