19 ひと時の幻想を
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「それで…あなたはどなたですか?」
「私かい?私は……ミナキだ!!」
ミナキと名乗った男はバサッとマントを風になびかせる。
するとマントの中からたくさんのハトがでてきて、空中に飛び立った。
「すごーい!」
「(わあ……)」
これにはクリスも感動して呆気にとられる。
「あー!いた!」
「お兄ちゃん!急に消えないでよ!」
「もう1回マジック見せてー!」
ハトにつられてやって来たのか、塾の子供達がどこからか走ってきてミナキの周りをわらわらと取り囲んだ。
「この人のこと知ってるの?」
クリスがミナキを指差し、子供達に問いかける。
「い、いや、別に……」
「うん!このお兄ちゃん、魔法使いなんだよ!」
「~っ!;」
「ま、魔法使い…?」
クリスがチラリとミナキを振り返ると、彼はびくっと反応し、あわてて得意げな表情をつくった。
「そ、そう!いかにも!私は子供達に夢をあたえる魔法使いだ!」
「………。」
「な、なんだその目は!」
クリスがかわいそうな人をみるような表情でミナキを見れば、彼は慌てたようにあたふたし始めた。
「クリスお姉ちゃん!信じてあげてよ!」
「そうだよ!この人本当に魔法使いだよ!空からふってきたんだもん!」
「お、おい、」
「空から!?」
「ほうきで飛んでたらおちちゃったんだって!」
「だから怒らないであげて!」
クリスはその言葉に眉をひそめた。
「(ほうき…?)別に怒ってないわよ?ただ、何者なのか聞いてただけだから。」
「さーて、私はそろそろおいとま…」
「だって!よかったね、魔法使いさん!柵壊したことおこられなくて!」
「しー!しーっ!!;」
人差し指を顔の前にもってきて必死にジェスチャーするミナキ。
だが、その努力むなしく、クリスにはばっちり聞こえてしまったようだ。
「柵をこわしたぁ!?」
「いや、それはだな…」
「怒らないで!クリスお姉ちゃん!魔法使いのお兄ちゃん、ほうきでうまく飛べないから練習してたら失敗しちゃったの!頑張りやさんなんだから!」
「!?き、君、フォローは嬉しいが、もうじゅうぶん…」
「そうだよ!おわびにって僕らにマジックを見せてくれたんだ!だからこの人はいい人だよ!」
子供は実に正直者だ。
真相がどんどん暴かれ、クリスはそれを黙って聞いていたがやがて静かに口を開いた。
「……ふーん。なるほど。」
「おお!分かってくれたか!というわけで、私は魔法使いなんだよ。さて、そろそろ魔法の国に帰らなければ!ハハハハハ!」
ミナキがそそくさと立ち去ろうと、足を進めた瞬間……
「ぐえっ!」
彼はマントをつかまれ、後ろにひっぱられる。
もちろんつかんだのはクリスだ。
彼女はニコリと笑って言った。
「つまりアナタは柵を壊したところを子供達に見られたから、マジックでそれを忘れさせようとしたってことね。」
「いや、その……」
「子供達の純粋さを利用して自分の失敗を隠そうとするなんてひどい人!私、そういう人大嫌い!」
「す、すいませんでした。」
彼女が放つオーラに危険を感じたのか、ミナキはすぐさまあやまった。
「クリスお姉ちゃん、許してあげなよ。あやまってるんだし。」
「そうだよ。僕、あんなすごいマジック、初めてみたよ!」
子供達が次々にミナキをかばう。
どうやらマジックを見せられて、すっかり彼になついたようだ。
「皆…。分かったわ。…もういいですよ。」
「本当か!?」
「ええ。」
パア…と一気に明るい表情になったミナキに、クリスは思わず苦笑した。
「皆、壊れた柵にはしばらく近づかないでね。危ないから。」
「「「は~い!」」」
元気よく返事をする子供達。
「?直さないのか?柵…。」
「直したいけど…今それどころじゃないんですよ。いろいろ、お金がかかるし…。」
ほんのり暗い表情になったクリスを見て、ミナキはうーんと考えこむ。
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