18 真実へと続く階段
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「……やっぱりゴールドは優しいね。」
「え?今、何て…」
イミテがあまりに小声でつぶやいたためよく聞こえず、ゴールドは聞き返そうとした。
直後、イミテが床に矢をはなち、ガサガサ…!という音とともに蔓でできた格子状の壁があらわれた。
それはイミテとナツメ、そしてゴールドとクリスの間にさえぎるようになっている。
「イミテ先輩!?」
ゴールドは驚きながら、蔓の向こうにいるイミテの名前を呼ぶ。
彼女は、静かに言った。
「さっきの戦い少し見てたけど、ナツメって人、打撃攻撃は効かないみたいね。」
「え?…まあ、そうみたいッスね。」
「じゃあ、こっちは私にまかせて。なんとかする。」
「1人じゃ危ないッスよ!それに2人で行動って、イミテ先輩が自分で…」
慌てるゴールドをよそに、イミテは軽く微笑む。
「あの女の子…、悲しそうな目してる。」
「!」
イミテもイミテで、クリスに何かあることを感じていたのだ。
「話、聞いてあげて。助けてあげて。」
「でも、」
「ゴールドならできるよ。信じてる。」
そう言ってゴールドを見つめるイミテ。
ゴールドはコクリと頷いた。
「俺もイミテ先輩のこと信じてるッスよ!ナツメのこと、こてんぱんにしてやってください!!」
元気よく言って、ゴールドは走りだした。
「クリス!鬼ごっこしようぜ!」
振り向いてニヤリと笑うと、彼は階段を使って上の階へと駆け上がる。
「いけ、クリス。始末しろ。」
動こうとしないクリスにナツメが命令すると、彼女は「……はい。」と言って、ゴールドの後を追った。
「さて、」
2人きりになったこの階。
ナツメがイミテに再び目を向ける。
「緑の能力者、だったな…。めんどうなことをしてくれたな。」
ナツメは格子状の蔓に手をやりながら言った。
「これでもう逃げられない。おとなしくサカキの情報をはいたほうが身のためだと思うけど?」
「やはりサカキ様のことをかぎまわっていたのは、お前達だったか。」
ナツメはフッと笑う。
そして鋭い目つきでイミテを見て、続けた。
「光の能力者の始末、というのが命令だったが…、邪魔者は早急に始末するべきだな。」
ナツメが左手をスッとあげると、イミテの近くにあった窓ガラスが割れた。
「!」
イミテは慌てて腕でかばったが、あいにくグローブをしていない側の腕だったので、少し切り傷ができた。
「(手を挙げただけだったのに…)」
武器らしいものは何も見えなかった。
では、ナツメはどうやってガラスを割ったのだろうか。
「まさかアンタも能力者…?」
「能力者…とは少し違うな。私は、生まれた時から、この体に不思議な力が染み付いていた。」
「不思議な力…。」
「そう。今みたいに心の中で強く念じれば、形になって現れる。言わば、超能力だ。」
「!じゃあ…前、私の弓を操ったのも、私の仲間を操ったのも、アンタってわけ?」
それを聞いてナツメは「さあな。」と笑った。
「無駄話はここまでだ。お前がここにいるということは、光の能力者も近くにいるんだろう?さっさと始末しに行かなければいけないからな。」
「始末?笑わせないで。私がそんなことさせない。」
「フフ…ずいぶんと自信があるようだが、そういう奴にかぎって返り討ちにあうものだ。お前は私に勝てない。」
「やってみなきゃ分からないでしょ!」
イミテは勢いよくそう言うと、矢を1本、何の前兆もなく放った。
それは真っ直ぐ、ナツメの真っ正面にとんでいったが…、
「無駄だ。」
「!?」
後数センチ、というところでピタリと止まった。
そして弓は反転し、矢をうった本人であるイミテに向かって飛んでいく。
「っ!」
イミテは驚きながらもそれをギリギリのところでかわした。
「お前の媒介は、弓。弓は矢をとばす。矢がお前の手元から離れた時点で、私はそれを自由に操れる。」
「!」
「言っただろう?お前は私には勝てない。」
ナツメは弧を描くように口元を緩ませ、笑った。
彼女が腕をあげれば、先ほどくだかれたガラスの破片が、スッと浮き上がり、イミテに狙いをさだめる。
「さあ、終わりにしよう。」
月明かりに照らされ、ガラスがギラリと不気味に光った。
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