18 真実へと続く階段
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タンタンタン、と階段を上る音と、ハアハア、という乱れた息づかいのみが、不気味なこの建物に響く。
今は丁度3階あたり。
ゴールドと少女の追いかけっこは今だに続いていた。
「待てっつってんだよ!」
しびれを切らしたゴールドが、ヒュッと棍棒を一振りする。
すると微量の電流が、少女の足首にまとわりついた。
「きゃ!」
少女は痺れのせいで足がもつれて、小さな悲鳴をあげてその場に転んだ。
丁度3階の階段を上り終え、4階に差しかかった時のことだ。
「わりいな。でもアンタが逃げるから悪いんだぜ?」
ゴールドはそう言って手を差し出す。
しかし少女はそれを無視し、フイッとそっぽを向いた。
「かわいくねー奴!とりあえず、もう逃げるなよ。こっちは用があって追いかけてたっつーのに。」
ゴールドはそう言って、ひょいっと少女に向かって何かを投げた。
……イヤリングだ。
「え、これ…。」
「この前お前が消えた後に拾った。…大事なもんなんだろ?なくすなよ。」
左耳にだけついているイヤリングを指差してゴールドは言う。
片方なくしてもつけているなんて愛着があるんだろう、と彼は思ったのだ。
「ありがとう…。」
呟くようにそう言った少女。
しかしそれからはすっかり口を閉ざしてしまい、沈黙が続いた。
「……つーかさあ、」
見かねたゴールドが話し始める。
「お前なの?グリーン先輩…あー…、あのトゲトゲ頭のつり目な人、操ったの。」
ひどい言いようだが、ゴールドらしいたとえだ。
「……。」
「無言かよ。見ず知らずの奴には言えねーってか?そりゃあそうだよな、俺ら敵だし。」
「敵なのに…」
「あ?」
少女は下を向いたまま呟くように言う。
「……敵なのに…、どうしてわざわざ拾って届けたの?」
「なにが?」
「……イヤリング…。」
「ああ」とゴールドは声を上げ、続ける。
「…なんでかなー。自分でも分かんねえ。ただ何となく届けてやろうと思っただけ。まあ、気まぐれってことにしとけ。」
「変な人…。」
気の抜けたようなゴールドの言葉に、少女は呆れたようにクスリと笑った。
「俺はお前もなかなか変な奴だと思うぜ。」
「え…?」
「お前、笑ったほうが可愛いじゃねーか。何でそんな辛そうな顔してんだよ。」
「そんなことな「ある。…今にも泣きそうな顔してんぞ。」
「………。」
少女はまた、口を閉ざしてしまった。
「……お前さあ、何でナツメの仲間なんかになったんだよ?」
「……。」
「アイツらの噂はよく聞く。いろんなとこで悪事を働いてるってな。」
「……。」
「お前、本当にアイツらの仲間…なのか?」
「……………。」
口を閉ざしっぱなしの少女。
ゴールドは仕方ない、と思いながら、さっきとは打って変わって鋭い目つきで少女を見る。
「お前らの悪事のせいで迷惑してる奴がたくさんいるんだ。人傷つけて楽しいのかよ?黙ってるってことは肯定か?」
「……。」
「人の痛みがわかんねーなんて、最低だな。」
「!」
ゴールドの言葉に少女はバッと立ち上がり、彼の胸元をつかんだ。
その目には、涙がにじんでいる。
「あんな人達と一緒にしないでよ!私だって…、私だって本当はあんなことやりたくなかった…!私だって、もっと…「何をしている。」
少女の言葉は、第三者の声によって遮られた。
カッカッと、階段を上がる靴の音が高らかに響く。
ゴールドでも少女でもない、第三者の。
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