17 風に誘われた香り
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「ふーん?レッドはどうだったの、教会。楽しかった?」
「ああ。珍しいもん見れて良かったけど、ゴールドがはしゃぎすぎて追い出されちまってさ。」
「あははっ。でもまさかゴールドまで教会に興味があるとは思わなかったな。」
「ただ内装が見たかっただけみたいだぜ?すぐ帰りたがってたし。」
「なるほどね。ゴールドらしい。」
姿は見えないけど頭の中にイミテが優しく笑っている姿が思いうかんで、レッドも表情をゆるめる。
「ねえ、レッド?」
「ん?」
「覚えてないかもしれないけど、昔は私とレッド、一緒にお風呂入ってたんだ。」
「は!?」
レッドは驚き、思わず叫んだ。
イミテは軽く笑い、続ける。
「5才くらいの時…かな?一応バスタオルまいてたけどね。」
「もしかしてグリーンも一緒にか?」
「ううん。まだグリーンがいない頃。」
「え…?」
「グリーンはレッドと私が知り合って、少ししてからマサラに来たから。」
「へー…。」
そう言われてもレッドは全く思い出せず、何だかやるせない気持ちになる。
「お互いに髪の毛洗いっこしたりして…。で、2人して同じ石けんの香りさせながら、そのまま日向ぼっこしてたり…。」
イミテは懐かしそうに目を細めて思い返す。
あの頃はどこへ行くにも、いつもレッドが隣にいた。
「なんか楽しそうでいいな、そういうの。羨ましい。」
「え?羨ましいって…レッド、一緒にお風呂入りたいの?やらしー。」
「はっ!?ちょ…、そういう意味じゃなくて…!」
飛び跳ねて慌てて否定したため、反動でお湯がザバ、とこぼれる。
そんな慌てっぷりを聞いて、イミテはくすくすと笑う。
「冗談。分かってるって。」
「たく…、」
クスクスと笑うイミテ。
レッドはまた、お湯に体をしずめた。
「はー…。なんかのぼせそう。」
「大丈夫か?」
「うん。長く入りすぎたかも。私、そろそろでるね。」
ザバとお湯からあがるおとがした。
「ああ。……明日、頑張ろうな。」
「うん。…おやすみ。」
数秒後にパタンと扉が閉まる。
「………俺とイミテが一緒にいた時間って、グリーンより長いのか…。」
レッドは空を見上げ、思っていたことを思わず口に出す。
初めて知ったまさかの事実。
そして先ほど聞いた、イミテとの思い出話。
レッドはそれを特別なもののように感じていた。
「そっか…。」
ポツリ。
自分に言い聞かせるようにまたつぶやく。
なんだか、心につっかかっていたものがなくなった気がした―…。
一方、部屋に戻ったイミテ。
「ただいま、イエロー。」
「おかえりなさい!どうでした?お風呂。」
「んー?気持ちよかったよ。」
部屋に入るなり駆け寄ってきたイエローに、彼女は笑顔で答える。
「そうですか!僕も夕飯食べたんで入ってきますね。」
「うん。いってらっしゃい。」
「……。」
しかしイエローは足を止め、イミテの顔をまじまじと見つめる。
「どうかした?」
「いえ……なんだか、イミテさん、嬉しそうだなー、って思って。」
「え……そう?」
イミテは思わず、自分の顔に手をあてる。
「…きっとさっき、懐かしいこと思い出してたからかな。」
彼女は楽しそうに笑った。
そう、遠い記憶のことだけれど、目を閉じれば今でも鮮明に思い出せる。
まだあどけなさの残る
あの頃の私達は
いつも楽しそうに笑っていた
その時はこれからおこるであろう不幸と
自分達の運命に
まだ、これっぽっちも
気づいていなかったから
.