17 風に誘われた香り
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「(へー、意外と広いんだな…。)」
さっそくお風呂にやってきたレッドは、その広さに感嘆していた。
安くて小さいホテルのわりにはお風呂は大きい。
おそらくお風呂好きなイミテの意見でこのホテルが選ばれたのだろうと、安易に想像できて笑ってしまった。
ガララッという音とともに大浴場の扉を開ければ、目の前に大きな露天風呂が広がっている。
「(あれ、誰もいない…。人気ないのか?ここの風呂…。)」
他に人影は見あたらずまさに貸し切り状態。
「(ま、いっか。ゆっくりできるし。)」
レッドはさっそく、不透明な白の濁り湯に体をしずめた。
上を見れば、湯気が暗い空にもくもくと立ち込めている。
すると突然、近くでザザーという水音がした。
「(隣…?誰か入ってんのかな…?)」
隣は女湯だ。
もちろん長い竹筒の壁で見えないようになっているが、露天風呂だから音はよく聞こえる。
ふと、ある匂いが鼻をかすめた。
甘い優しい匂い。
ふんわりとした花のような匂い。
――あ、もしかして、
「イミテ…?」
気がつけばつぶやいていた。
「え……、レッド?」
その声に反応して、壁の向こう側から声が返ってくる。
「やっぱイミテか!」
「うん。よく分かったね?私、何も声だしてないのに。」
「いやー…、なんとなく…。」
さすがに気恥ずかしくて匂いがしたとは言えず、レッドは曖昧な答えを返す。
「ふーん?グリーンとゴールドもそこにいるの?」
「いや、俺1人だけ。他の客もいないし貸し切り状態だぜ。そっちはイエローいんのか?」
「ううん。こっちも誰もいない。たぶん他のお客さんは夕食食べてるんじゃない?」
「え、夕飯ってこの時間なのか?」
「うん。あ、さてはレッド、女将さんの説明よく聞いてなかったでしょ?」
「おう…。すっかり。」
「今ごろ部屋に食事が運ばれてると思うよ。」とイミテは少し笑いながら言った。
「イミテはもう食べたのか?」
「うん。この時間ならお風呂がすいてると思って、夕食、早めてもらったんだ。」
「はは、さすが。イミテ、ほんと風呂好きだよなー。」
「だって気持ちいいじゃん。それに最近はこんな広々としたお風呂入れなかったから、ゆっくりしたかったし。」
「確かに…そう言われればそうだな。」
タマムシからこの町にくるまでは全く何もなかったため、例のレッドの能力を使って簡単にすませていた。
だからお湯につかれるのは久々だ。
ザバン、と水がはねる音がする。
おそらくイミテがお湯につかったんだろう。
なんだか、状景が目に浮かんでレッドは思わず微笑んだ。
「……なあ。イミテ、俺達と別れた後、グリーンとどうしたんだ?」
「え、どうって…、どういう意味?」
乾いたような口調で言うイミテに、レッドははっとした。
―何聞いてんだ、俺…
「いや、わりい、何でもない。」
自分でも意図が見えない質問をしたことに、彼は困惑した。
何でこんなことを聞いてしまったのか分からない。
でもそれは昼間から自分の中にずっと引っかかっていたのに変わりはなかった。
焦りをけすかのように、レッドはザバッと顔にお湯をかける。
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