01 かごの中の鳥
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自室へ向かうために、城の廊下を歩くイミテ。
彼女の左腕にあてられているハンカチは赤く染まっていた。
今だに血は止まっていないようだ。
「(ちょっとやりすぎたかも…)」
あの場をしのぐためとは言え、矢を刺すのが深すぎたかもしれない。
「(まさかイエローが能力者だったなんて…。無事に逃げられてよかった。)」
能力者だとバレなければ、必要以上に追いかけられることもないだろう。
逆に能力者だということが政府に知られれば、その能力を一生利用されることになる。
(まるで、鳥かごにいれられた鳥)
『私は…ここにいなきゃいけないの』
イミテは先ほどイエローにそう言った。
……実はそれは、正確に言えば『ここにしかいられない』という意味だ。
イミテの能力を使えば、この城から出る事なんてたやすい。
しかし、城を出たとしても、きっと彼女の居場所はない。
能力者をかくまった町は罰せられる。
それがこの国の掟だから。
周りに迷惑をかけないようにするには、やはり、この城で政府の駒として生きていくしかないのだ。
(鳥かごの扉はいつだって開いている)
(だけど、)
「………。」
無意識のうちにハンカチをおさえている手には力がこもっていて…、ポタリと、傷口から真っ赤な血が床に落ちた。
(自由なんてないんだ)
一方、レッドとグリーンは、マサラタウンを出てからひたすら北へと歩いていた。
「なあ、グリーン。」
「なんだ?」
「まず、何から始めればいいと思う?」
「……俺に聞くな。」
「だよなー。」
レッドは案の定なグリーンの答えに苦笑して、頭の後ろに手を回した。
はあー、とため息をつき、空を見上げる。
『世界を変える』
『能力者に対する差別のない国にする』
そう言ったはいいものの、具体的に何をすればいいかは決まっていない。
……あてのない旅になりそうだ。
そんな考えが頭の中にふとよぎった時、レッドはある物を見つけて目を見開く。
「グリーン!見ろよ、あれ…、」
レッドが指さした先に広がっていたのは、辺り一面の焼け野原。
焼け焦げた木の燃えカスや、灰がアチコチにあった。
「…ひどいな。」
グリーンはそう呟き、そばにあった看板らしきものに歩みよる。
かなり灰をかぶってはいるが、奇跡的に炎には巻き込まれなかったようだ。
グリーンはパッパッと灰をはらい、看板に書かれた文字をたどる。
「トキワの、森…。」
「!森だったのか、ここ…。」
再び辺りを見回すが、木も草も1本もなく、茶色の景色しかない。
この光景を見て、以前森だったなんて誰が信じるだろう。
「普通の火事…じゃないよな。森がまるまる1つ燃えてなくなるなんて…。」
レッドはうーん、と少しうつむいて考えこむ。
そんな彼の様子を見て、グリーンはため息まじりに言った。
「…この先にニビシティという町がある。そこで聞けば何か分かるだろ。」
「へ…?」
「その顔…どうせ気になって仕方ないんだろ。さっさと行くぞ。」
「!さすがグリーン。分かってるな!」
レッドは満面の笑みとともにそう言って、また、歩き出した。
好奇心を翼に
大空に飛びたった
きっとまだ
鳥かごは開いている
.