01 かごの中の鳥
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「さ、イエロー。早く行って。」
「だけど、私を逃がしたらイミテさんが危ないんじゃ、」
「大丈夫。うまくごまかすから。心配しないで。」
「…でも、」
イエローは納得いかなそうにうつむく。
次いで、意を決したように顔をあげて言った。
「イミテさんも一緒に逃げま「イエロー。」
しかし、彼女の言葉はイミテによって遮られる。
「…守りたいモノが、あるんだ。だから私は…ここにいなきゃいけないの。」
そう言ってイミテは目を細める。
「イミテ、さん…。」
儚い表情…でもそれでいて強い目に、イエローは何も言えなかった。
自分が踏み入れる場所じゃない。
まるで…聖域のような。
そんな雰囲気が、イミテから漂っているように思えて。
何も…言えなかった。
「行って、イエロー。」
「……。」
イミテに優しく背中を押されて、イエローは促されるように地下への階段へと足を進める。
「…大切なモノを見失わなければ、きっともっと…強くなれるよ。」
「え…」
イミテのそのつぶやきを最後に、ゴゴゴ…と抜け道の扉は閉まった。
「さてと…」
イミテはくるりと振り返り、今後は牢屋の入り口へ向かう。
「おい!開けろって!」
見回りの軍人によって、相変わらず扉はドンドンと叩かれていた。
イミテは扉の近くに刺してあった矢を抜き、それを自分の左腕に勢いよく……突き刺した。
「…ッ!」
歯を食いしばり、懸命に声を抑える。
同時にバンと扉が開いて、見回りの軍人が中に入ってきた。
「どうしてすぐに扉を開けなかっ……、!?なんだ、その怪我は…!?」
イミテの腕からあふれ出る血に気づいた軍人は、傷口を診ようとした。
イミテは体をスッと背けて、上手くそれをかわす。
「物音がしたから来てみたら、攻撃されて…。」
イミテは言いながら、軍服のポケットからハンカチを取り出すと傷口にあてた。
「…で、今朝捕まえた侵入者が脱獄した。」
もちろんそれは真っ赤な嘘。
軍人は不審に思ったようで、眉間にシワをよせる。
「脱獄…だと?ここの扉は閉まっていたんだ。逃げ道などあるはずがない。」
「嘘だと思うなら確かめてみれば?アナタは気づかなかったのかもしれないけれど、彼女は能力者だったんだよ。光の。」
「な…!?」
「能力者なら、この牢屋から逃げる手段なんていくらでもあるんじゃない?あ…」
イミテはニッと、不敵な笑みをうかべて言った。
「そんな重要な人材に脱獄されたなんて知れたら、王は激怒するかもね。」
「!脱獄されたのはお前のせいだろ!」
「…私は別に、ここの見回り担当じゃないし。人のせいにしないでくれる?」
「く……!」
イミテの強気な発言に、軍人は言葉をつまらせた。
「本来なら報告するべきだけど…私も怪我をしたこと王に知られたくないし…。」
「………。」
「…牢屋にいた少女は能力者はじゃなかった。麻酔銃を隠し持っていて、脱獄をはかった。ついでに、私はこの場所にいなかった。どう?」
「……チッ。」
軍人は軽く舌打ちをして、顔を背けた。
「…交渉成立、ね。」
イミテは軽く笑いながら軍人を一瞥して、部屋を後にした。
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