16 理由は単純、君だから
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「お前、誰だ!」
レッドが女性に向かってそう叫ぶと、彼女はトンと地面に降りた。
「私はナツメだ。キョウ、マチスとならぶ、三幹部の1人。サカキ様の忠実なる部下。」
「サカキの…!?」
「今回は運がよかったな。だが、お前らはいずれ私が始末する。その時がくるまで、せいぜい恐怖にむしばまれるがいい。」
フフフ、と彼女が不気味な笑いをすればまた辺りに強風がふいた。
「う、わ……!」
ゴールドは思わず片腕を顔の前にやり、とばされないように踏ん張る。
やがて風がおさまり目を開ければ、
「いない……。」
ナツメと名乗った女性も少女も姿を消していた。
「何だったんだ、一体……。」
「ねえ…サカキが私達を消そうとしてるの?」
「たぶん、な。いろいろとかぎまわってる俺らのことを邪魔に思ったのか…、あと考えられるとしたら…、」
レッドは言いづらいのか口を閉ざす。
「考えられるとしたら、僕…ですよね。光の能力者は始末始末したのか?って言ってたし…。」
「大丈夫。絶対、守るから。」
「イミテさん…」
不安気にうつむいたイエローの頭を、イミテが優しくなでた。
「あ……」
ふと、ゴールドは草の影に光るものを見つける。
「(イヤリング……)」
それは少女がしていたものだった。
先ほどの風でとれてしまったのだろうか。
「ゴールド。」
「はい?」
突然名前を呼ばれ、ゴールドは何となくそのイヤリングをポケットに隠した。
「ありがとう。いろいろと。ゴールドのおかげで助かったよ。」
「やめてくださいよ、たいしたことしてねーし、それに俺、イミテ先輩には迷惑かけちまったし…。」
イミテはふるふると首を横にふる。
「迷惑だなんて思ってないよ。もう誤解も解けたし。」
「でも、」
「私は嬉しかったよ。ゴールドが私が能力者だって知っても態度変えないでくれて。」
「イミテ先輩…。」
「ゴールドに会えて良かった。」
イミテはにっこりと優しく微笑んだ。
「……ねえ、一緒に旅しない?」
イミテはゴールドを見つめ直し、真っ直ぐにそう言った。
「え…?」
「仲間に、なろう?」
言葉を変えて、もう一度。
「そ、そりゃあ俺は能力者だったみたいだし…、力になれるかもしれないッスけど」
「違う。能力とか関係ない。ゴールドだから仲間になりたいの。」
「俺……だから?」
きょとんとするゴールド。
「1人ぼっちは、もうおしまいにしよう?…ね?」
「!」
イミテはキレイに笑って言った。
その様子を見ていたレッドがゆっくりと近づき、イミテの隣に立つ。
「……ゴールド、わりい。本当は俺、昨日イミテとゴールドが話してた時、そばにいて…全部聞いちまったんだ。」
「え…。」
「ゴールドが裏切られて辛い思いをしてきたこと…知った。」
「……。」
レッドはゴールドに真剣な眼差しをむける。
「ゴールド。裏切られのが嫌だから仲間になりたくないっていうんなら、俺を信じろ。」
「レッド先輩を?」
レッドはコクリと頷く。
「俺じゃなくてもイミテでもイエローでも、グリーンでもいい。ここにいる誰かを信じろ。」
「………。」
「俺達は絶対に裏切らない。約束する。」
ゴールドはその言葉にゆっくりと辺りを見回した。
イミテもイエローも優しく頷く。
「………。」
こんなに温かいぬくもりを感じたのは、母が死んで以来初めてだ―…。
ゴールドは心の中でつぶやく。
昨日、彼らを見ているだけで感じた強い絆。
自分も彼らと、そんな絆を結べるだろうか…。
…そうなればいいと思っている自分が、今、たしかにここにいる。
「……信じるッス。」
ゴールドは意を決したように呟く。
「信じるッスよ、先輩。」
今度は太陽のような笑顔とともに。
人は新しい絆を結び、
それを深めることで
自分を成長させるんだ
1人きりで泣くよりも、きっと
誰かと笑うほうが何倍も幸せになれるから
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