16 理由は単純、君だから
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声のする方向…扉付近に、弓を構えるイミテの姿があった。
グリーンはそれに反応すると、バッとゴールドの腕をつかんでイミテと自分との間に、盾にするように立たせる。
そしてゴールドの首もとに刀をあてた。
「「「!」」」
イミテとレッドとイエローの3人は、その行動に目を疑った。
そんな中、ゴールドがつぶやくようにイミテに向かって話しかける。
「…いいッスよ。イミテ先輩、うってください。」
「何言って…」
「このままだと皆やられます。今俺ごとグリーン先輩をうてば助かるんスよ?」
「ゴールド…?」
うっすらと笑いを浮かべながら言うゴールドに、イミテは不信感を覚え、思わず名前を呼ぶ。
「早くうってください。俺は裏切られるの慣れてるんで、平気ッス。」
表情はいたって穏やか。
でもその言葉は冷たく、重く、切なささえ感じた。
「できるわけないでしょ?」
「大丈夫ッスよ。弓は俺に刺さって止まるはずッスから。」
「……バカ言わないで。私はゴールドにも死なれたくないの。絶対に、2人とも助ける。」
「………っ、」
イミテの強い目が、ゴールドをとらえる。
「ついでに教えてあげるよ。……私が軍にいた理由。」
イミテはそう言って、グリーン達のいる足元に向けて矢を放つ。
矢はカッと地面に刺さり、次の瞬間、ゴールドは目を疑った。
「……!」
矢から勢いよく蔓がでて、あっという間にグリーンの体に巻きついたのだ。
グリーンは驚いてゴールドの首を切ろうとするが、刀をもっている右手はすでに蔓が巻きつき完全に動きを止めていた。
「まさか…能、力者…?」
グリーンから解放されたゴールドだったが、あまりに突然の出来事に動くことができず、その場に呆然と立ち尽くしていた。
「……そう。緑の能力だよ。私はこの力をかわれて、強制的に軍人にさせられた。大切なもの、全部奪われて、ね。」
「強制的に……。」
ゴールドは予想だにしなかった事実を知り、思わず復唱する。
イミテはゴールドの棍棒を拾い上げ、彼に手渡した。
「隠しててごめん。」
「………」
ゴールドは無言のまま棍棒を受け取り、目を丸くしてイミテを見つめた。
でもそれは能力者だということを知って恐怖をいだいたからではない。
単純に、信じられなかったのだ。
いつも穏やかな笑みを浮かべていたイミテが、能力者だったなんて。
そして、そのせいで失ったものがあるなんて。
何より、彼女もまた自分と同じように苦しみを抱えていたなんて。
「イミテ先輩が…能力者。」
「うん。怖い?」
「……いや、怖くはないッス…。」
それは素直な気持ちだった。
むしろ何故そんな質問をするのか聞き返したいぐらいだった。
ゴールドは能力者を見たのはこれが初めてだ。
旅人達の噂を聞いて“能力者は化け物”というイメージを持っていた彼だったが、その考えを今まさにくつがえされた。
イミテは何も変わっているところなどない。
考えかたも、見た目も、心も、能力意外は全て自分と同じではないか。
「そっか。よかった。」
そう言って優しく微笑んだイミテ。
ほら、一体彼女の何が怖いというんだろう?
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