01 かごの中の鳥
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「…でも、光の能力は、人を傷つけることはないよね。」
「え…?」
イミテがまた歩き出して、イエローもそれに続いた。
イミテは歩きながら、静かに言う。
「人を傷つけずに、ただ癒やすことができる。無駄な争いはしなくていい。…私は、素敵な能力だと思う。」
「っ!……たしかに私も、以前はこの能力に納得していました。性にあってるのかもしれないって…。」
イエローは一瞬言葉につまり、うつむいた。
彼女自身、争いごとを好まない性格だから、光の能力で良かったと何度か思ったことがあったのも事実。
……まあ、故郷が燃え尽きて以来、そんなことは思わなくなったのだが。
「…でも、気づいたんです。大切なものを守るためには、戦うことも必要だって…!」
「……。」
「だから私は、戦えないこの能力は…嫌いですッ!」
苦い思い出を思い出すかのようにギュッと固く握られたイエローの拳。
そこに、イミテがそっと手をそえた。
「力があればいいってもんじゃないよ。…人間は醜いから。」
「え…?」
「自分と少しでも違うものがあれば差別するし、排除しようとする。それが戦う力ならなおさら。」
「…。」
「むしろイエローの能力は戦いに不向きでよかったと思う。そのほうがずっと生きやすいよ。この世界では。」
「でも、私は…!」
イエローは反論しようとしたが、その前にイミテがピタリと足を止めた。
「よし、着いた。」
「え…行き止まりじゃ…?」
彼女達の目の前にあったのは、ごく普通の壁。
イミテはフッと軽く笑みをうかべ、弓矢を構えた。
そして壁の角に向けて矢を放つ。
「!?」
ゴゴゴという音をたてて床がパカッと割れ…、地下へと続く階段が現れた。
「抜け道だよ。ここを進めば、この町のはずれにある森に出られるの。」
「こんな仕掛け、一体どうやって…。イミテさんが作ったんですか!?」
「ううん、まさか。ずいぶん昔からあったみたい。たぶん敵が攻めてきたときの、避難通路か何かじゃない?」
「へー…。!」
何かに気づいたみたいで、イエローの表情が変わった。
「これは…イミテさんがたまたま見つけたものなんですか?」
「あー…うん。この城に来て、何日もたたないうちにね。」
「……私、噂でイミテさんは、能力者だから…無理矢理ここに連れてこられたって聞きました。」
「?うん。間違ってはいないけど。」
イエローがゴクリと息をのむ。
「じゃあ…どうして、イミテさんは逃げないんですか?抜け道だってあるし、アナタほどの実力があれば、簡単に…」
イミテは一瞬目をそらし、そしてまたイエローを見つめ…笑った。
一見穏やかそうに見えるが、どことなく寂しげなその笑顔に、イエローは胸がギュッとしめつけられた。
「私には…ここにいなきゃいけない理由があるから。」
「え…?」
突然、ドンドンドン!と、勢いよく扉が叩かれる音がした。
イミテが蔓で開かないようにしていた扉だ。
「おい!誰かいるのか!?今すぐここを開けろ!」
「気づかれちゃったか…。」
イミテは大してあわてもせずに、ポツリとつぶやく。
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