15 裏切りの傷跡
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「……ゴールドくん、落ち着いたら俺の家に来てくれ。また、ゆっくり話しあおう。」
今のゴールドには何を言っても無駄だろう。
そう判断したハヤト。
「……この事実を受け入れたとき、ゴールドくん……君はきっと強くなれるよ。」
すれ違いざまにそう言い残し、彼は部屋から出て行った。
今は混乱しているだけ
落ち着けばまた自分を頼ってくれる
そう過信して
でも、ゴールドは違った
「―……っ、ざけんな!何が、軍だ…!」
自分と母の遺体だけになった部屋の中。
ゴールドは先ほどハヤトにはじきとばされた剣を拾い上げた。
「何が、……政府だ…!」
そのままそれを、怒りをぶつけるかのように壁に投げつける。
「…ざけんな!!」
彼は軍を恨むとともに、軍人であった自らの父も憎らしく思ったのだ。
父さんが軍人なんかじゃなければ――
母さんが、父さんと結婚しなければ―――
いや、違う……、
俺が、いなければ……?
「う、うわああああ!!」
(泣き叫びながら、冷たくなった母に、助けを求めるようにすがりつく)
(でももう、彼女が彼を、温かく抱きしめることは二度とない)
(皮肉にも、痛いくらいの冷たさが、彼の体に伝わっていった)
一通りのことを話し終えたゴールドは、ふう、と息をついた。
もうその手にある紅茶はすっかり冷めてしまっている。
「で、俺はその日の夜、自分の家に火をつけたんス。…父さんの形見の剣も、一緒にね。」
思い出を焼き付くすため、帰る場所を焼き尽くすため。
彼は全てを捨てたのだ。
「……辛かった、ね。」
ゴールドのたまに見せる悲しげな表情の正体は、これだったんだ…と、イミテは言い表しようのない気持ちになりながら思う。
彼はそれから1人で盗賊として過ごしていたハズだ。
誰にも心の内を打ち明けず、誰も信用せず、戻れない過去に苦しみながら。
(たった1人で)
(あれから、ずっと)
「ねえ、ゴールド、」
「……そうだ。イミテ先輩。俺、さっき嘘つきました。」
「え…?」
「盗賊にやってる理由、生きるためだって言ったけど、」
ゴールドはゆっくりと顔をあげて、言った。
「……軍に復讐するためッスよ、イミテ先輩。」
とても冷たい眼差しと共に。
「俺、本当は普通の旅人から何か盗んだことはないんスよ。相手が軍人の時だけ襲ってたんです。」
「盗むじゃなくて…、襲う?」
「はい。棍棒でもやっぱそれなりの威力はあるんで少し怪我させたりして。」
盗賊の自分を捕まえにきた軍人を、片っ端から倒していく。
……それが、彼なりの復讐。
「もう何年もたつのに、今でも軍が憎くてたまらないんスよ。」
彼は3年前のあの時から、母の死の責任を背負い続けている。
心の傷はまだ消えず、くっきりとゴールドの中に残っている。
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