15 裏切りの傷跡
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「だからだよ。…だから彼女は自ら命をたったんだ。彼女が生きていたらきっとゴールドくんは意地でも治療費を集めようとするだろう?」
「……そんなこと…、」
そんなことない、とはとても言えなかった。
世界でたった1人の母なのだ。
少しでも長く生きてほしいと思うのは当然のことだ。
「自分が生きていたら、治療費のぶん生活費が減る。そう思ったんだろう。」
「………。」
「…この家は資産家だ。彼女の治療費さえなければ…、ゴールドくんが成人するまでの収入がなくてもなんとかなる。だから彼女は…、」
ハヤトはそう言って言葉を濁した。
ゴールドが、拳を震わせ泣いていたから。
「母さん、が、……俺のために死んだ……?」
「……そうだ。」
彼にはもう、じゅうぶん伝わっただろう。
ゴールドはバッと顔をあげ、ハヤトを強く、強く睨んだ。
「ハヤトさんは……アンタはその封筒の中身がなんだか知ってたんだろ!?」
「そう、だな…。」
「じゃあ何で、渡してくれなんて頼んだ…!?こうなることは、分かりきってたはずなのに…!」
「仕方なかったんだ。上からの命令には逆らえない。ゴールドくん、少し落ち着いて……」
「っ!触んな!!」
ゴールドをなだめようと伸びてきたハヤトの手を、彼はバシンと叩き、拒否する。
「上とか下とか、そんなん関係ねーだろ!弱い奴を守るのが軍人ってもんじゃねーのかよ!!」
その強さで弱いものを守る
守るために戦う
“軍人は戦いが強いだけじゃダメなのよ。心が優しくなきゃ。”
“困っている人とか弱い人がいたら助けてあげる…。そんな優しい心が必要なの。”
少なくともゴールドは、母親にそう教えられてきた。
「アンタなら…俺の家の事情も分かりきってる。なんとか……アンタが上に講義してくれれば、なんとかなったんじゃねえのかよ!?」
「ゴールドくん、軍というのは組織的なものなんだ。俺1人が意見したところで……、」
「うるせえ!!」
ゴールドは腰から剣を抜き、ハヤトに向けた。
「俺はアンタに憧れてた。俺も将来こんな軍人になりてぇって、本当に思ってた。」
「ゴールドくん、」
「だけど……!」
ゴールドは怒りをこらえるように剣を固く握る。
「だけど今はそんな気持ち、これっぽっちもねえ……!!」
「………。」
「しょせん自分が大事だから何もしなかったんだろ…!アンタは俺達を、母さんを……見殺しにし」
言葉の途中で、カキンという音がして、ゴールドの剣は手からとんだ。
「それ以上、……言うな。」
自身の剣を構えるハヤト。
彼が剣をとばしたのだ。
「あのままだと君達親子は、路上で飢え死にするしかなかった。……俺は、せめて、ゴールドくんにだけは生き残ってほしかったんだ。」
それは、ハヤトの切実な思い。
ゴールドの母に死の原因となる封筒を送ったのは、彼にとっても苦肉の策だったのだ。
「そんなキレイごとで、俺が納得すると思ってんのか…!?」
しかし今のゴールドが素直にハヤトの言葉を受け入れる訳がない。
だって、今やゴールドにとってハヤトは、味方でも仲間でもない―……、
“敵”なのだから
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