15 裏切りの傷跡
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「……ゴールドくん、」
聞き覚えのある声が彼の名を呼んだ。
「ハヤト、さん……!」
ゆっくり顔を上げれば、ドアのところにハヤトの姿が。
彼を心配してあがってきたのだろうか?
「母さん、が……なあ、母、さんが……!」
ゴールドはすがりつくようにハヤトの胸元を掴んで、伝えようとした。
しかし、ゴールドの心の叫びはうまく言葉にならない。
ゴールドの手には血がついていたため、ハヤトの胸元にくっきりと赤い手形が残った。
「!そうだ!病院……!…病院に行けば、まだ、まにあう……、」
「ゴールドくん…見れば分かるだろう?」
「何がだよ!?は、早く、病院に…!」
懸命に立ち上がったゴールドの両肩を、ハヤトはガシッと掴む。
「今さら何をしたって、無駄なんだ!」
「…!」
「もう…死んでる。彼女は。」
ハヤトは彼の目を見て、そう低く告げた。
「な、んで…!なんでハヤトさんはそんなに冷静、なんだよ…!?…まさか知ってたのか…!?」
「……。」
「なんで…、っ!」
ゴールドはハッとして、何かを思い出したように机の中を震える手で探る。
そして…。
「…あった……!コレを見た時……母さんの表情が変わったんだ!なあ、ハヤトさん、何か知ってるんだろ!?」
ゴールドがハヤトにつきつけたのは、先日彼が母に渡してくれと言っていた封筒。
「………。」
「なあ…!本当にこれ、薬のことなのかよ……?」
「………。」
「……何とか言えよっ!」
ゴールドが叫ぶ。
彼の目からは、もはやいつから流れ出ていたか分からないが、涙がどんどんどんどん、たまっては溢れていた。
ゴールドの気迫に観念したのかは定かではないが、
「それは、……給付金廃止の通知だ。」
ようやくハヤトが口を開いた。
「給付、金…?」
何のことだか分からず、ゴールドが聞き返す。
「ゴールド。君の父は偉大な軍人だった。トップにたち、皆をまとめ、政治についてもその知恵で混乱を防いでくれた。」
「……ああ。」
それはゴールドも、以前何度も母から聞いていた。
「政府は彼にものすごく感謝してる。だから彼が殉職した後も、ゴールドくん達家族を支援してきたんだ。君の母親の治療費、ゴールドくん達の生活費…。生きる為に必要なもの、すべてを。」
ゴールドはその事実に目を見開き、驚いた。
自分達は父の財産のおかげで生きてきた。
そう、母も言っていたのに―……。
今思えばゴールドの母は息子に余計な心配をさせないため、そんな嘘をついたのかもしれない。
「でもこの前の軍会議で、死んだ者の家族まで面倒をみる必要はない、そう決まったんだ。」
「っ!…そんなことしたら俺たち家族が生きていけないこと…少し調べれば分かるだろ!?」
「ああ。すべてを知った上での決断だったよ。特にゴールドの母親の高額な治療費が影響することは…、目にみえていた。」
「いくら高くたって治療費は母さんが生きていくために必要なんだよ…っ!」
ハヤトは遺体となっているであろうゴールドの母を一瞥する。
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