15 裏切りの傷跡
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ゴールドの父は今はこの世にはいない。
この町の軍人であった彼の名を知らない者はいないだろう。
戦いが強いうえに人格も良く、皆にしたわれている、そんな人だった。
しかし数年前、隣国との戦争で命を落としてしまったのだ。
病気の妻と幼い子供を残しての、早すぎる死。
周りは彼の死を悲しみ、ゴールド達家族の今後を哀れんだ。
しかしゴールド達の未来はそれほど悲観するものではなかった。
その理由は父が残した莫大な財産。
収入がない彼らも、そのおかげで使用人を雇う余裕ができるほどの安定した生活をおくっている。
彼らが今こうして生きているのは、全て、父おかげ。
そんな偉大な父の形見だという剣が今、ゴールドの目の前にある。
しかし彼は手を伸ばそうとしない。
その剣に触れてみたいという胸の高鳴りも感じていたが、自分に使いこなせるのかと不安に思っていたのだ。
ゴールドの母はそれを察したのか、箱から剣を取り出し彼に差し出した。
「父さんは立派な軍人だったわ。あの人が最期まで使ってた相棒が…、この剣なの。ゴールドも、この剣と一緒に強くなりなさい。」
彼女は優しく微笑む。
ゴールドは無言でそれを受け取った。
それから数日後。
リーン、と正門のベルが鳴り、ゴールドは訪問者を確認するため玄関を開けた。
「あ…ハヤトさん!」
「やあ、ゴールド君。」
そこにいたのは片手をあげて挨拶するハヤト。
ゴールドはすぐさま門を開け、ハヤトに駆け寄った。
「どうしたんスか!?」
「近くまで来たからお見舞いにきたんだ。……お母さんは元気かい?」
「元気ッスよ!今日も朝から『顔洗ったの?』とか『手伝いしなさい』とかうるさくて。」
「ははっ、そうか。……ならいいんだ。」
ゴールドの話しを笑いながら楽しそうに聞く一方で、一瞬ハヤトが浮かない顔をしたのだが、ゴールドは気気づかなかった。
「あ!なんならあがっていきます?」
「いや、いい。今日はこの後も仕事があるんだ。」
「仕事……?」
「ああ。捕まえた盗賊を政府に連れて行く仕事がね。」
その言葉を聞き、ゴールドの表情がパアっと明るくなる。
「悪い奴らをやっつけてくれたんスね!やっぱハヤトさんはかっこいいッス!」
「そうか?そう言われるとなんだか照れるな。」
照れ隠しに軍の帽子をかぶり直すハヤト。
ゴールドはそのしぐささえもかっこいいと思っていた。
将来軍人になってその帽子をかぶるのが、ゴールドの憧れなのだ。
「あ!今度剣術教えてください!俺、新しい剣もらったんスよ!」
「いいよ。じゃあ次に休みがとれたら迎えにくる。」
「へへ!ありがとうございます!」
ゴールドがニッと笑ったと同時に、遠くのほうでカンカンと鐘の音が聞こえた。
それは軍人の召集を知らせる音。
「そろそろ行かないとな。……ゴールドくん、君のお母さんにコレを渡してくれるか?」
ハヤトはゴールドに茶色い封筒を手渡した。
「これ、なんスか?」
「…新薬の内容だよ。ゴールドくんにはまだ難しいから見ても分からないだろう。」
「たく、ハヤトさんまで俺を子供扱いするんスか?」
ゴールドが口をとがらせれば、ハヤトは笑いながら彼の髪をくしゃりと撫で「じゃあまた」と言い去っていった。
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