01 かごの中の鳥
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その日、月が少し西よりになった深夜。
イミテは見張りに見つからないように、慎重に監獄部屋の通路を歩いていた。
彼女の姿に気づいた囚人達が「ここから出せ!」と鉄の檻を掴んで訴えている。
「(………。)」
…その姿は、とても醜く感じる。
イミテは彼らには目もくれず、凛と歩き続ける。
やがて彼女が足を止めたのは、イエローのいる牢屋の前だった。
この暗闇でも分かる。
イエローの目には涙がたまっていた。
まぶたも腫れて、うっすらと赤くなっている。
おそらくずっと泣いていたのだろう。
「っ!」
イミテに気づいたイエローは、グッと服の袖で涙をぬぐった。
そして彼女をキッと睨みつけて、威勢良く言う。
「笑いに来たんですか…!?アナタの顔なんて見たくありません!出て行って下さい!」
「しっ。騒がないで!」
イミテはポケットから鍵を取り出し、牢屋の鍵穴に差し込んだ。
ガチャ。
小さな音をたてて鍵が開いた。
「え…?なんで…!?」
驚きを隠しきれずにいるイエローに、イミテは穏やかな笑みを見せた。
「約束、したでしょ?助けてあげるって。」
「あ……。」
昼間、最初に見せた温かい表情と同じだ。
「……あ、ありがとうございます…。」
「うん。立てる?」
「は、はい…!」
イエローはスッと立ち上がった。
イミテは彼女の腕をつかみ、「行くよ。」と言うとスタスタと歩き出す。
「どこに行くんですか…?」
「ここから出るの。」
「え…!?どうやって!?それに逃げても見張りがすぐ追いかけてくるんじゃ…」
「見張りなら大丈夫。」
イミテはそう言ってくるりと振り返り、扉を指差す。
その近くに矢がささっていて、そこから扉を覆うように蔓がのびていた。
蔓のおかげでドアは開かないようになっている。
「すごい…!」
イエローは思わずそう言った。
その言葉にイミテがぴくっと反応する。
「…怖くないの?能力者が。」
「え、あ…、はい!もちろん!」
イエローは苦笑いをうかべて続けてる。
「実は私も、能力者なんです。」
「!」
「だから、能力者を怖いって思うと、自分も怖いって思うことになると言うか…。……あれ?」
イエローは途中で首をかしげた。
だんだんと自分で自分の言うことが分からなくなってきたらしい。
その様子に、イミテはぷっとふきだす。
「え…(笑われた!?//)」
「能力って、なんの能力?」
「あ…光です!だから怪我を治すだけで、イミテさんみたいに戦うことはできないんですけど…。」
イエローはしゅんとうつむく。
光の能力者は他とは違い特殊で、媒介を必要としない代わりに治癒しかできない。
故に彼女は、政府に自分の故郷の森に火をつけられた時なにもできず、その惨事を見ているだけだった。
自分の能力が水ならば…いや、火でも緑でも…攻撃できる能力なら、何かしら反抗できたかもしれないのに…。
森が死んでいくのを呆然と見ながら、ただ…自分の能力を、呪った。
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