15 裏切りの傷跡
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「何年か前まで…、俺の家は町で一番の資産家だったんス。」
月明かりの下、ザアアという川の流れる音を聞きながら、ゴールドは昔を思い返し話し始めた。
それは、3年前の話。
ゴールドは、ワカバタウンという町で生まれ育った。
そこは小さいながらも活気あふれる町で、彼はこの町に生まれたことを誇りに思っていた。
そんな町の中でひときわ目立つ、大きな一軒の家。
周りは鉄でできた頑丈な門に囲まれていて、見るからに豪邸。
そここそがゴールドの家であった。
ある日のこと。
ゴールドはダダダ、と慌ただしく階段をかけ上がると、
「母さん!」
と、そのまま部屋のドアを勢いよく開けた。
ゴールドの大声に反応し、ベッドに寝ていた女性はため息をつきながらドアに目を向ける。
顔も髪色もゴールドによく似ている、その女性。
そう、ゴールドの母である。
そしてそのベッドの近くのテーブルには何種類もの薬が置いてあった。
どうやら彼女は病気をわずらっているらしい。
しかしその血色はよく、表情も明るかった。
「こら、ゴールド!もっと静かに入ってこれないの?」
言葉では怒っているが、それが彼女の本心ではないことをゴールドは知っている。
だから起きあがった彼女に嬉しそうに話しかけた。
「母さん、さっき外に軍隊がいたんだ!」
「あら?今日、何か行事でもあったかしら…?」
「町の外の盗賊を取り締まるんだってさ!ハヤトさんもいたんだ!」
ハヤト、というのは軍人の1人で、ゴールドの母の古くからの友人だ。
たまに家に見舞いに来たりしている。
正義感あふれる人で、ゴールドも彼によくなついていた。
「そう…。無茶しなきゃいいけどね。」
「大丈夫さ!ハヤトさんは強いから!俺もいつかハヤトさんみたいな軍人になるんだ!」
「ふふ。ゴールドがなれるかしら?軍人は戦いが強いだけじゃダメなのよ。心が優しくなきゃ。」
「優しく…?」
「そうよ。困っている人とか弱い人がいたら助けてあげる…。そんな優しい心が必要なの。ゴールドにできる?」
彼女が少しあざけた声を出せば、ゴールドはむすっとしながら答えた。
「できるさ!俺は、誰よりも、優しくて強い軍人になる!」
キラキラと目を輝かせながら言うゴールドに、彼女は自身の夫…、つまりゴールドの父の面影をみた。
……前向きでまっすぐな人だった、父の。
「じゃあ…そろそろ…、コレをあげてもいい頃ね。」
彼女はそう言って立ち上がる。
「母さん!?寝てないと…、」
「大丈夫よ。今日は調子がいいの。」
ゴールドの制止をかわし、彼女がベッドの下から取り出した黒い革製の箱。
その蓋を開ければ、そこには1本の剣がはいっていた。
「これは…?」
「父さんの片見の剣よ。いつかそのときがきたらゴールドに渡してくれ、って言ってたの。」
「父さんの…。」
そう呟き剣を見つめたゴールド。
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