14 越えられない憧れ
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ゴールドは河原にいた。
その場に片膝を立てて座り、ただぼんやりと水の流れを見つめている。
皆といた時の彼とは似つかわしくないくらい、憂鬱そうな表情。
そんな様子を見て一瞬足を止め戸惑いを見せたイミテだったが、やがてゆっくりと彼に近づいていった。
「眠れないの?」
イミテはそう言いながら彼の隣に座り、「はい」とさきほどのお茶を手渡す。
彼はまさか自分が出て行くところを誰かに見られていたとは思ってもいなかったため、目を見開いて驚いていた。
でも、とりあえず「ありがとうございます」とお礼を言い、湯気のでているそれを受け取る。
「興奮がおさまらなくて寝付けないんスよ。」
イミテが声をかける前の憂鬱な表情はどこにいったのか、いつもと同じ、おどけた調子で笑うゴールド。
「そんなに楽しかった?」
「はい。誰かと一緒に食事したのも久々なんで。話し相手がいるのもいいもんッスね。」
ゴールドは何気なくお茶を口に運び、驚く。
「あれ?まずかった?」
「いや…すげーおいしいッス!何のお茶ッスか?」
「それは一応オリジナル。薬草を摘んできてブレンドしたんだ。」
「薬草…。そのわりにはあんまり苦味がありませんよね?むしろ少し甘い…。」
「他の茶葉も合わせてあるし、砂糖とハチミツもいれてあるからね。実はその紅茶、軽い睡眠作用のある薬草がはいってるの。」
「…睡眠作用って、もしかして俺のためッスか?」
「うーん、正直なところ自分も飲むついで。とりあえずあと30分ぐらいすれば、今夜はぐっすり眠れると思うよ。」
にっこりと微笑んだイミテ。
次いで自分もお茶を口にする。
ゴールドはしばらくの間、その優しい表情に見とれていた。
「はは…、ありがとうございます!イミテ先輩、優しいッスね!」
「…優しいのはゴールドだよ。盗賊なのに考え方が優しい。」
「え、俺…!?」
「うん。なんか…思いやりがある。」
「え…!?//」
ゴールドはそんなほめられ方をされると思わなかったのか、おどおどと慌て始めた。
そんな様子の彼にイミテはやわらかく笑うと、優しい目つきで川を見つめながら聞く。
「ゴールドはどうして盗賊やってるの?」
「どうしてって…。」
「他人の物盗んで後ろめたさは、ない?」
「……説教しに来たんスか?」
「ううん。気になっただけ。」
ゴールドは一拍おいて、
「…後ろめたくても、そうしないと生きていけないんスよ。」
はき捨てるように低く呟いた。
イミテはただ「そっか。」とだけ返して口を閉ざす。
「………。」
ゴールドはそんな彼女の反応を不思議に思っていた。
彼が盗賊になってから出会う人は皆、「盗賊なんてやめろ」と言うか、気を使ってその話題にふれないかのどちらかだった。
しかし彼女は自分から話題をもちかけたくせに、彼をとがめようとも、否定しようともしない。
(まるで砂浜を行ったり来たりする海のように、)
(近づいては遠ざかる。)
傷つけないように、でも、相手の心に働きかけて促すように。
「………。」
ゴールドはまた一口紅茶を口に運ぶ。
やはり、優しい味だった。
「イミテ先輩、」
「ん?」
「…俺、最初から盗賊だった訳じゃないんスよ。」
さあ、教えて
君の心の闇を
私も少し
背負ってあげる
.