13 知って、知って、私のこと
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「レッドは…覚えてないんだよね。」
イミテの言葉に、レッドは少し気まずそうに「ああ。」とだけ返事を返した。
「…私のお母さん、薬剤師だったんだ。」
「え…!?」
何の前ぶれもなく話し始めたイミテ。
レッドは初めて知った事実(正確に言えば忘れているだけなのだが…)に驚いた表情になる。
そんな様子に、イミテはまた悲しそうに笑った。
イミテの母は生前、薬草の研究や調合を専門とする仕事―…薬剤師の職に就いていた。
ゆえに薬草の採集にイミテもついて行くことが多々あり、初歩的な知識はある程度自然と覚えているのだ。
もちろんレッドもイミテの母には会ったことがあるのだが、覚えているわけがなかった。
「薬剤師、か…。」
「村の人の手当てもしてたから、皆からすごく慕われてたの。」
思い出すように目を細めて言うイミテは、すごく優しい表情をしていた。
「そっか。すごい人だったんだな。……俺、会ったことあるんだろ?」
「うん。お母さん、レッドのこと息子みたいに可愛がってた。レッドが遊びに来るといつもより、はりきって料理作ったり…ふふ。」
彼女はなつかしそうに思い出し笑いをする。
「へー!だったら早く思い出して、会ったときにちゃんとお礼言えるようにしないと…だな。」
レッドも笑って言うが、イミテがつられて笑うことはなかった。
「……イミテ?」
それを不思議に思い、レッドは思わず彼女の顔を覗きこむ。
「それは無理、かな。」
「え…?」
「お母さん、もうこの世界にいないから。」
気まずそうに笑ったイミテ。
その笑顔には悲しみや辛さや…いろんなものが含まれている。
それが、レッドの中の何かと重なった。
「っ……!」
その瞬間、彼を激しい頭痛が襲い、頭をおさえた。
「レッド…!?平気…!?」
「あ、ああ…。」
レッドは返事を返したが、かなり辛そうだ。
「…ごめん。話しすぎたね。……私、水探してくる。」
そう言って立ち上がろうとしたイミテ。
そんな彼女の腕をレッドがつかんで止めた。
「?レッ、」
「もう少し聞かせてくれ。」
「!?でもこれ以上話すと頭痛が…。」
「聞きたいんだ、頼む、イミテ。」
切羽詰まったように。
すがりつくように。
レッドは真剣な表情で言った。
「………。」
なにか焦ったような感じを汲み取ったイミテは、落ち着かせるようにレッドに優しく笑いかける。
「無理しちゃダメだよ。」
「…。」
「ゆっくり思いだそう。ね?」
「……そう、だな。」
イミテを掴んでいた手を離し、レッドは「わるい。」苦笑いをうかべた。
「(俺……)」
なぜだろう?
分からない、…分からないけれど…。
もっと、イミテのことを知りたいと思った。
もっと、彼女に近づきたいと思った。
そうすれば、何か大切な…忘れちゃいけない、大切な気持ちも、思い出せる気がしたんだ―……。
強く想っていたことは
無意識のうちに
行動に現れていく
早く、思いださなければ
想いが溢れる、その前に―…
.