13 知って、知って、私のこと
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「!まさか、レッド…私を庇ってそんな怪我したの…!?」
そこで初めて彼女は事実に気づいた。
「いやー…これぐらい大したことないし。心配するなよ。」
彼はいつもの笑顔を見せた。
しかし痛みが強いのか、額には汗が滲んでいる。
「どうして…?一緒に落ちて怪我するよりは、後から崖降りてったほうがよかったんじゃ…?」
イミテの言葉にレッドはバツが悪そうに笑って言った。
「ははっ、そんなの考える暇なかった。気がついたら…身体が動いてたんだ。」
「そんなの…、」
「ごめんな。余計めんどくさいことになっちまった。」
「…っ!」
反論するつもりだった彼女だが、こうも潔く謝られると逆に申し訳なくなってしまう。
それにお礼を言うタイミングも逃してしまった。
なにより…なんだか彼が…ものすごく、大人っぽく思えて、圧倒されてしまった。
「うーん…、どうやって上がるか…。」
レッドは座り込んだまま崖を見上げる。
おそらくは足が痛くて立てないのだが。
「あっ、それなら大丈夫。この高さなら蔓が届くから。」
イミテは緑の能力を使って崖を上がるつもりなのだろう。
辺りを見回し、弓を探し始めた。
「(あれ…?)」
しかし、一向に見つからない。
弓はそんなに軽くはないから、風に飛ばされることもないはず。
落ちるとしたらこの辺りなのは確かなのだが…。
「レッド…、弓、知らない?」
全く見つからないため、イミテはレッドに聞く。
レッドは少し考え、顔をしかめて言った。
「……もしかしたら崖の上かも。」
「え…?私、弓がたしかに落ちたの見たけど。」
「俺も見た。けど落ちてすぐ、一瞬、弓が空中で止まって崖の上に戻ったように見えたんだ。」
「空中で…!?…ありえない。あの弓は別に特別な木で作られてる訳でもないのに。」
「だとしたら…、」
レッドが真剣な表情になって言う。
「第三者が弓を操った、としか考えられないな。」
「第三者…。」
イミテがポツリと復唱する。
果たしてそんな高度な能力を使える者がこの世に存在するのだろうか。
「っ…!」
突然、レッドが顔を歪めた。
「!?…ちょっと見せて!」
イミテはレッドに近づき、バッと膝の傷口を見る。
止血も何もしていない彼の膝は、出血が悪化していた。
「!レッド、今まで無理して…。」
「大丈ぶ「大丈夫なわけないでしょ!!」
イミテには珍しく焦ったように大声をあげたため、レッドは驚いて目を見開く。
「少し待ってて!絶対にここから動かないでよ?いい!?」
「え、」
イミテは念をおすようにそう言うと、レッドの返事も聞かずダッと走り出した。
どこまで言っても崖、崖、崖…。
道らしい道なんて見つからない。
そんななか、イミテはあるものを探していた。
「(ここは幸い光も差し込んでるし、少しはあるはずなんだけど…。)」
真っ暗でよく見えない。
しかも落ちた時に足をひねっていたらしく、今更になって痛みだした。
でも彼女は構わず歩き続ける。
「あっ…!」
これが不幸中の幸いというものだろうか?
今まで雲がかかって見えなかった月が、一瞬だけ姿を現した。
ほのかな月明かりに照らされて、彼女が探し求めていたものがぼんやりと浮かび上がる。
「!(あった…!)」
それは―…草。
イミテはすぐさまそれを引っこ抜く。
「(これがここに生えてるなら…もっと上のほうに…)」
イミテが上を見上げれば、案の定、目当ての白い花をつけた植物が。
背伸びをして手を伸ばしてみるが、数十センチ足りなかった。
何度か飛び跳ねたりしてみたが、一向に届く気配は感じられない。
「(だったら…。)」
彼女は4、5歩後ろに下がり、助走をつけると、一気に岩肌に足をかけた。
そして、大きく跳ぶ。
ズザッ、と反動でそのまま地面に倒れこんだが、その手にはしっかりと植物が握られていた。
「やった…」と小さく微笑むと、すぐさまレッドの元へと向かった。
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