13 知って、知って、私のこと
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「よっ、と。ほら。」
背伸びして高いところにある果物をなんとかとったレッド。
それをイミテに手渡す。
「これで5つ目だね。」
両手いっぱいの果物を見てイミテは嬉しそうに微笑んだ。
マサラタウンという自然あふれる村で育ったレッドとイミテ。
どれが何の木なのかは見ただけで分かり、ちゃくちゃくと食料は集まっていく。
「しっかし果物ばっかり集まってもなー…。」
「たしかに、魚とかもほしいね…。」
そう言って辺りを見回して見るけれど、目に入るのは木ばかり。
山に流れている川が見つかれば楽々と解決するのだが…。
「あ、木に登れば分かるかも。」
「!よーし!」
レッドは腕捲りして、木登りをする気満々の様子。
どうやらイミテにいいところを見せたいらしい。
「大丈夫。私が木のてっぺんまで蔓伸ばすから。」
「……ああ。」
彼は静かに腕捲りをおろし、同時にボルテージも下がっていく。
まあ…イミテの能力を使ったほうが早いから反論はできないのだが。
イミテは果物を一旦地面に置くと、背中に手を回して担いでいた弓をとろうと手を伸ばした。
……だが、彼女の手は宙を切る。
「?」
「あ!イミテ!後ろ!!」
レッドの声に振り返れば、ザザザ、と弓が山の急斜面を滑り落ちていた。
「え…!?」
イミテはいつも弓を太めの紐でつないで、背中に斜めがけにして担いでいる。
紐のつなぎ方が甘かったのだろうか?
こんなこと今まで一度もなかったのに。
不思議に思いながらも、彼女は止まる様子のない弓を必死に追いかける。
そして、不信感を覚えていたのはレッドも一緒だった。
急斜面を滑り落ちていく弓。
これだけ木や草が多い山の中だ。
何かに引っかかって止まってもいいはず。
しかしさっきから弓は止まる様子もなく、わざと木や草を避けるため不自然に動いているようにも見える。
とりあえずはぐれないように、とレッドも彼女の後を追っていた。
すると、少し先に大きな茂みが。
「(良かった…。これで止まる。)」
イミテはほっと一息つき、スピードを緩めようとしたのだが…、
ガサガザッ!!
「「!?」」
弓は茂みを突き破り、止まる様子なくさらに奥へと進んだ。
「うっ…わ…!?」
呆気にとられたイミテは、足元にあった丸太につまずいてしまう。
急斜面を下っていたため勢いもついていて、弓同様茂みに突っ込んでしまった。
次の瞬間、彼女は浮遊感に襲われる。
「っ…!?」
…足場がなかったのだ。
運悪く茂みの向こうは崖になっていたらしい。
少し先には同じように空中に放り出された弓も見える。
なんだか全てがスローモーションに見え人事のように感じていたが、次の瞬間一気に下へと落ちていく自分の体に、さすがに焦りを感じた。
チラリと目だけを動かし下を見てみれば、真っ暗でよく分からないけど深いであろう谷底が目に入る。
彼女の意識は、そこで途絶えた――……。
「――…イミテっ!!」
レッドはちゃんと茂みの前で止まれたが、空中に投げ出された彼女を見て、無意識のうちに地を蹴っていた。
「くそっ…!」
レッドはとにかくイミテへと手を伸ばす。
なんとか空中で彼女の腕を掴むことができ、そのまま抱き寄せ、庇うようにグッと包みこんだ。
落ちていく中で、視界に入った、夕焼け空。
そんななかを不自然に動く弓があった。
自分達より先に落ちたはずなのに、明らかに上のほうにある。
質量の違いから、当たり前といえば当たり前なのか…?
いや、違う―…。
「な……!?」
レッドは有り得ない光景を目にした。
弓が円を描いて崖の上へと戻っていったのだ。
「(なん、で…。)」
そして彼もまた、すさまじい浮遊感によって徐々に意識が遠のいていくのだった――……。
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