01 かごの中の鳥
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「はあ……。」
イミテはため息を1つつき、ガーデニング用の椅子に座った。
ここはSエリア。
別名、王にもっとも近い土地。
その名のとおり、王の部屋の目の前にある庭園。
そこがイミテの持ち場だった。
実力があるからこそ重要な場所の警備をまかされる。
“力が全て”
それがこの町の王の考え方だ。
このSエリア担当はイミテ1人のみ。
ここにたどり着く人なんて滅多にいないから、警備は実力のあるもの1人で充分なのである。
それが影響してか、彼女が人と関わる機会は全くない。
しかし、イミテにとってはそれが逆に居心地がよかった。
能力者だと、不気味に思われビクビクされながら団体行動をするよりよっぽどマシだ。
自分を拒絶するような周りの目を見るのは、…もうウンザリだ。
「(今日も、誰もこないだろうな。)」
そう高をくくり、イミテは弓を自分が座っている椅子に立てかけて置いた。
ここには、滅多に侵入者はこない。
いや…たどり着けないのだ。
Sエリアに来るには、何百という警備をふりきって、そして最後にタケシのいるAエリアを通らなければいけないから。
タケシはイミテほどではないが、戦いは強いほうだ。
ちなみにタケシは何かとイミテに対し世話を焼いている。
いきなり戦いの場に引きずりこまれた彼女を、放っておけないのだろう。
彼なりの優しさなのだろうが、イミテにしてみれば自分の心に土足で踏みいられたようなもので…ありがた迷惑にすぎなかった。
「(あ……)」
ふと、そよそよと風が吹き木々を揺らした。
風が気持ちのいい自然の匂いを共に運ぶ。
「(いい風……)」
フッとイミテの顔がゆるむ。
彼女の故郷の―…マサラタウンは自然あふれる町で、城の中で唯一草木が多いこの場所の雰囲気は、どことなく故郷を感じさせた。
故に、この場所にいる時が一番安らげる。
「……。」
心地よい風を全身で感じるかのように、イミテは目を閉じ、深く息を吸う。
丁度、その時だった。
バン!…と短い銃声が響いたのは。
辺りにはもくもくと白い煙がたちこめている。
原因は先ほどの銃声が関係しているのだろう。
煙が晴れたころ…、金色に輝く綺麗な髪をポニーテールにした少女が現れた。
少女は先ほどイミテが座っていた椅子に目をやる。
だが、彼女の姿はどこにもない。
「!一体どこに…!?」
彼女が能力者だと言うことは知っていた。
だからこそ特に用心して、たしかにスキをついたハズなのに…!
「……っ、」
銃を構え直し、ゴクリと固唾をのむ。
少女は気がついていなかった。
イミテが消えたと同時に、イミテの弓矢も消えていたことに。
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