01 かごの中の鳥
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一陣の風が吹き、少女の髪をなびかせた。
綺麗な深緑のその髪は、青い空によく映える。
少女の名は、イミテ。
彼女は開かれた窓から、ただぼんやりと空を見上げていた。
その表情はどことなく、儚げで…切ない。
そんな時、ガチャリとドアが開いた。
「イミテ。交代の時間だ。」
現れたのはタケシと言う1人の男。
イミテより少し年上の彼は、彼女の指揮官でもある。
「…分かってる。」
イミテは窓を閉めながら、いつものようにそっけなく答えた。
そんな彼女にタケシは険しい顔をする。
「お前には王を守るという、誇らしい仕事が与えられているんだぞ?もう少し喜べ。」
王を守るというのは、城の警備をするということ。
警備は軍隊が行う。
イミテはそんな軍隊の一員だった。
最年少で、しかも女でありながら一番強い。
理由はただ1つ―…、能力者だから。
「…私は無理矢理ここにつれてこられて、勝手に手下にされた。アナタみたいに、王を守りたいなんてこれっぽっちも思えない。」
軍隊に入ることは、自分から望んだことではない。
彼女の能力が王の目にとまり、強制的にここに連れてこられただけなのだ。
「知ったような事、言わないで。」
イミテはとげとげしくそう言い放ち、タケシを冷たい目で一瞥した。
「…さっさと、持ち場にいけ。」
「……。」
イミテは黙ったまま愛用の弓矢を持って立ち上がる。
その弓矢は彼女の能力を発揮するための媒介。
能力者は自分に適した媒介を持つことで、その能力を発揮することができるのだ。
「イミテ。」
ドアに向けて足を進めたイミテを、タケシが呼び止めた。
「お前は強い。この町の人は、皆お前を頼りにしている。」
「……。」
「妙なこと、考えるなよ?」
イミテはその言葉を聞き、一層冷ややかな目でタケシを見た。
「頼りにしてるなんて…馬鹿げてる。私は、この町の人にお礼を言われたことは一度もない。」
「……。」
「皆、私を利用しているだけ。…政府の道具として、ね。」
所詮、政府の言いなり。
自分は駒の1つでしかない。
「おい、」
バタン!
何か言いかけたタケシの言葉をさえぎるように、ドアが荒々しく閉まった。
…イミテの心はすっかり閉ざされていた。
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