11 それぞれの思いやり
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その女性は一軒の城の前で立ち止まる。
その城は一般的な城とは違い、一階建ての、和風造りのお屋敷みたいなものだ。
「ここが私の家ですわ。どうぞ上がってください。」
言われるがまま中に入れば、かなりの広さの玄関が彼らを出迎える。
彼女は貴族の家系の人間なのだろうか。
すぐに客間のようなところに通され、レッド達は用意された椅子に座る。
しばらく待っていると、侍女のような身なりの人が、紅茶とお菓子を運んできた。
「どうぞ。」
もちろん見ず知らずの人に出されたものに何の抵抗もなく手をつける勇気はない。
それを見越した女性は「心配なさらないで。毒なんて入ってませんから。」と、お菓子を1つつまみ口に運んで見せた。
そして「ほら、大丈夫でしょう?」とおしとやかに微笑む。
「…タマムシに何があったか話せ。」
まるでそんなものはどうでもいいとでも言うようにグリーンが切り出すと、女性はカタッと手にしていたカップを静かにテーブルに置いた。
「まず初めに、私の名前はエリカ。タマムシシティの長の1人娘ですわ。」
「ということは、アナタは王女ってこと?」
「ええ。私の父…つまり長は病で寝たきりのため、今は私がこの町を取り仕切っているんです。」
「町と言えるのか?民が全くいないが。」
「…仰るとおりですわ。」と、エリカは自嘲気味に笑った。
「やはり女性が民をまとめていることをよく思っていない人が多くて…。少し前からこの町では反乱が起きていますの。」
「待って。反乱が起きたからってこんなに一気に人がいなくなるもんなの?」
「それは…前にこの町を支配していた男…サカキのせいです。」
「サカキ…!」
その言葉を聞き、レッドは思わず目を見開く。
「サカキは反乱がおきたのをいいことに、さらに奇襲をかけてこの町を乗っ取ろうとしていますわ。民は彼を恐れて皆逃げ出してしまいました。」
「さっきの腐っていた花もサカキの仕業か?普通じゃ考えられない状態だったが。」
「あれは彼の闇の能力によるもので、」
「闇…!?サカキも能力者なのか!?」
「ええ。最近は彼のその暗くて冷たいあの能力しかみていなくて……だから、温かくて優しいアナタの能力を見て、すごく安心して…つい声をかけてしまいました。」
エリカはイエローに向けてにっこりと笑う。
「サカキって人は…よくここに来るんですか?」
「本人が来たのはついこの間ですわ。でも…新月の夜までに王女の座を辞退しておけ、と…。」
「新月って…今日じゃないか!?」
「じゃあ今日サカキが来る可能性が高いってことですね…。」
レッド達はお互いに目配せをした。
サカキに接触できるかもしれない。
「それにしても辞退しろ、ね…。エリカは王女をやめるつもりはないの?」
イミテの問いにエリカはにっこりと微笑んだ。
「もちろんです。私は王女であることを誇りに思っています。例え殺されようと、私は王女であり続けますわ。」
それは彼女の真っ直ぐな信念。
4人は強く心を打たれた。
「よし!俺達も協力する!」
「え…!?」
「そんな卑怯な奴にこの町とられるの、もったいないだろ?」
「そうですよ!反乱が起きたところを狙うなんて、許せません…!」
「待ってください…!アナタ方のお気持ちは嬉しいです。でも今日初めて会った方を危険な目にはあわせられませんわ!」
険しい表情で話すエリカに、イミテはクスッと笑って言った。
「優しすぎ。エリカは気にしなくていいよ。私達が勝手にやろうとしてるだけだし。」
「でも…!」
「私達はエリカにかけたの。アナタなら、きっといつか民も認めてくれる。この町は元通り笑顔であふれるようになる。そんな気がするから。」
それは、優しい言葉だった。
「本当に…ありがとうございます。」
「おう!」
エリカの目にはほんの少し、涙がたまっていた気がした。
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