10 縛られた生き方を見た
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“国に引き渡すか?”
“いや…人身売買のことがバレる危険性がある。媒介がなければただの人間だ。このまま売ろう。”
「……アタシ達は売れ残ったわ。仮面の男は…、売り物にもならない、能力者という化け物でもあるアタシ達を処分しようとした。」
「(ひどい…)」
「……そんなときに現れたのが、マチス様だった。」
“そいつら殺しちまうのか?顔はいいのにもったいないな。”
“マチス、か…。実のところ、こいつらは能力者なんだ。このまま飼ってたって餌代がかかるだけだ。”
“!能力者、か…。よし!俺がそいつら2匹とも買おう。”
“いやだ!離して!”
“黙れ!俺がお前らの命を救ったんだ。お前らにもう自由なんてもんはない。”
““………!””
“俺に一生の忠誠を誓え。いいな!”
「それからアタシ達はマチスの下で生きてきたの。やりたくない悪事だっていろいろとさせられて…。」
「…。」
「でも、シルバーがいたから頑張れた。この子だけは守らなきゃって…。…もう、せめてあの子だけでも自由にしてやりたいの。」
「だから…」と、ブルーは顔をあげてイミテの目を真っ直ぐ見つめて言った。
「アタシ達は王からの褒美に“自由”をもらう。」
迷いのない、目。
「(シルバーって子を、守りたくて…必死なんだなあ。)」
それに自分が利用されるのに、怒りを覚えるわけでもなく、悲しみを覚えるわけでもなく、……イミテは淡々とそんなことを思っていた。
表情を変えず見続けるイミテに、ブルーは気まずくなったのか重々しく口を開いた。
「…アンタには、悪いと思ってるわ。でもこうするしかないの。今までずっと我慢してきたんだもの…。」
しばらく沈黙が続き、部屋には船のボーッという出航の合図が悲しく響いた。
「…そっか。」
ブルーの一連の話しにそんな相づちをうったイミテを、ブルーは目を見開き信じられないと言った様子で見ていた。
「『…そっか。』って、それだけ!?」
「なにが?」
「…っ!なんで…!なんで怒らないのよ!?アンタを利用しようとしてるのよ!?自由を得るための道具として使おうとしてるのよ!?」
「……そうだね。」
「何でよ…!?憎くないの!?アタシ達が!なんで、憎まないのよ!?」
憎まれると思っていた。
恨まれると思っていた。
大声で罵倒されても仕方ないと思っていた。
だって自分達はそれほど残酷なことをしようとしているのだから。
ブルー自身も能力者だから分かるのだ。
自分自身が道具として扱われる、その辛さ、苦しさが。
人間としてすら見られない、悔しさが。心の…痛みが。
それなのにどうして…、目の前にいる彼女はこんなにも平然としているのか。
「なんで、って…、」
イミテは少し言葉をつまらせ少し考えこむと、やがて勝ち誇ったような笑みを見せて言った。
「恨まなきゃいけない義務でもあるの?」
「……っ、」
ズキンと、ブルーは胸が締め付けられる思いがした。
まさか、そんなことを言われるなんて、これっぽっちも思っていなかったから。
どうして……彼女も能力者なのに、そんなにもキレイな心でいられるの…?
「(どうして……っ、)」
(ああ―……、)
(恨まれる覚悟なら、できていたのに)
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