10 縛られた生き方を見た
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「う……」
ズキン、ズキン…という規則正しいリズムのように響く頭痛で目を覚ました、イミテ。
まだぼんやりとする意識の中で、痛むのは頭のみであれほど痛かったはずの胸の辺りはなんともないことに気づく。
「(傷が…ない…?)」
視線だけを向けて自分の身体を見ると、何の外傷もない。
もちろん、あれだけベッタリと服についていた血もきれいさっぱり消えている。
「(あれは…やっぱり幻覚…?)」
イエローもグリーンも、レッドも。
自分がよく知った表情や動きや仕草をしていたのに…幻覚だったなんて。
……それにしても、まったく嫌な内容の幻覚だった。
「(ここは…)」
ゆっくりと身体を起こし、辺りを見回す。
…見覚えのないどこかの部屋だ。上のほうに小さい円型の窓があるだけの、薄暗い部屋。
そして自分は格子状の檻の中にいれられている。
「っ……」
少し身体を動かせば、両手に痛みを感じた。
「(鎖…?)」
見れば、両手が鎖で縛られている。
「(敵が来る前に、この鎖なんとかしときたいな…)」
幸い足は何もされていなかったためイミテは立ち上がり、コンクリートの壁に手ごと打ちつける。
しかしガン、ガン…と鎖のぶつかる音が響くだけでそれが緩む様子はない。
しかも、だんだんと打ちつけた手が赤くなり痛んできた。
「(無理、か…)」
「ふう…、少しはおとなしくしててくれないかしら?」
「!」
ドアの開く音とともに眩しい光が差し込み、現れたのは見覚えのある少女だった。
「アナタ…、レッドに剣を届けてくれた…」
「ブルーよ。よろしくね。」
ブルーはにっこりと微笑むが、その笑みに温かさは感じない。
よろしく、と言いながら、仲良くする気はさらさらないようだ。
「そういうこと…ね。」
イミテの中で何かがつながったようで、はあ…と疲れたように息を吐きながら言う。
「初めから、騙すつもりで近づいたの?」
「ええ。アンタ達みたいな単純なのは騙しやすくて楽だったわ。…まあ、グリーンって子は少し疑ってたみたいだけど。」
ブルーは檻ごしにイミテに話しかける。
「…目的は何?」
「それは、アンタが一番よく分かってるんじゃない?」
「…王からの褒美でしょ?」
イミテの言葉に答えるかのように、ブルーはにこりと笑う。
すると、ボーッという音がして大きく床が揺れた。
「(なに…!?)」
「うふふ。そろそろ出航するようね。」
「出航って…ここは船?」
「そうよ。サントアンヌ号って言うの。ちなみにこの船の所有者はマチス様。」
「(マチスって…あの赤髪の男の子が言ってたな…。)」
「このままマチス様のいるグレンタウンまで行くの。」
「そこで私を引き渡すってワケね…。」
イミテは再びふう、とため息をつき、ブルーの顔を見て言う。
「…アナタの仲間の赤髪の男の子、彼も能力者でしょう?」
「ああ、シルバーのこと?」
「(シルバー…。)」
「やっぱり気づいてたのね。そうよ、シルバーは闇の能力者。そして…、」
ブルーは鈴を取り出し、リンとひとふりする。
するとどこからか水が集まって、それはイミテの目の前で球状になってふわふわと空中に浮いた。
「アタシは水の能力者。水なら自由自在に操れる。」
「(彼ら自身も、能力者…!)マチスって人の手下って言ったけど、それってその能力を目につけられて無理矢理手下にされたってこと?」
「まあ…だいたい当たってるけど、ちょっと違うわ。そんなに単純なものじゃない。」
そう言ったブルーの表情は、どことなくさびしそうなものだった。
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