00 知られざる能力
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「…ッ、」
そして、レッド自身も能力者追放についての決まりはもちろん知っていた。
ただ、納得できなかったのだ。
自分が生まれ育ったこの町を、こんなにもあっさりと追い出されることが。
能力があるというだけで、周りからの目がガラリと変わった。
今も、町の皆が自分達を指差してひそひそと話をしている。
きっと自分達は、恐怖をもたらす存在としか思われていない。
「……。」
コロリと変わる人の心が、恐ろしいと感じた。
…ほんの少し、憎くも思えた。
「本当にマサラが好きなら…でていくべきだ。」
でも、この町が好きだという気持ちは変わらなくて…。
……皆を危険な目には合わせたくない。
グリーンの言葉に、レッドは頷くしかなかった。
数時間後。
マサラタウンの門の前に、旅支度をしたレッドとグリーンが立っていた。
日はすっかり沈んで、辺りは暗い。
「…すまない、レッド、グリーン。」
深々と下げられた長老の白髪まじりの頭が、少し切なく、寂しく見える。
「……。あやまらないで下さい。俺達は、平気ですから。」
レッドはニカッといつもの笑顔を見せた。
だが長老は、さらに深く、2人に頭をさげる。
「すまない、本当に…。守ってやれなくて…すまない。」
「長老…。」
レッドはそんな彼の様子を見て、どうすることもできず、呆然と立ち尽くす。
「…レッド、行くぞ。」
すると、グリーンがスタスタと歩きだした。
オーキド博士のこんな姿をこれ以上見たくなかったからだろうか。
「…ああ。」
レッドも足を進める。
「……。」
しばらく歩いたところで、レッドは突然足を止めて振り返り、大声で叫んだ。
「今まで…ありがとうございました!マサラをお願いします!」
オーキド博士は、レッドの言葉に、コクコクと何度も頷いた。
その後、レッドとグリーンは共に一度も振り向かなかった。
……振り向けなかったのかもしれない。
「…グリーン。」
足は止めず、レッドが隣を歩いているグリーンに言った。
「俺、やっぱりマサラが好きだ。いつかまた…あの町に戻りたい。」
「……。」
グリーンは黙ったまま、レッドの話しを聞く。
「だから、この世界を変えてみせる。能力者に対する、こんな差別みたいな決まり…なくしてやる!」
レッドは力強く、言った。
グリーンがチラリとレッドのほうを見れば、彼の瞳は真っ直ぐと前を見ていた。
迷いのない、強い目だ。
「…お前らしいな。」
フッと笑いながら言ったグリーンに、レッドは「ああ!」と笑顔を返す。
「俺も付き合う。」
「へ…?」
「…お前だけじゃ心配だからな。」
付け足すようにぶっきらぼうに呟かれた言葉に、レッドは思わずふきだし、ガシッとグリーンの肩を組んだ。
「前から思ってたんだけど、グリーンっていい奴だよな!」
「…離せ。うっとうしい。」
ぼんやりと光る月が、まるで2人を歓迎するかのように優しく照らした。
ちょうど今宵は、綺麗な満月だ。
知らなかった想いを得て
踏み出したことのない道を歩く
優しく足元を照らす月は
きっと、あたたかな道しるべ
光を見失わないかぎり
道に迷うことはない
.