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12月24日。
世間ではクリスマスイブとされている。
【Not Merry Xmas!】
「メリークリスマス&ハッピーバースデー!シルバー!」
サンタ風の真っ赤な帽子をかぶって楽しげにそう言ったブルー姉さん。
「おめでとう!シルバー!」
「ブルー先輩、可愛すぎッス!」
それを合図にゴールドとクリスがお祝いの言葉を口々に叫んだ。
まあ後者はどちらの言葉だか分かると思うが。
「おい、バカ。姉さんを変な目で見るな。」
「バカとはなんだよ、シスコンシルバー!誰のために集まってやったと思ってんだ!」
「別に来てくれとは頼んでないだろ。というかお前がサンタの帽子をかぶるな。気持ち悪い。」
そう、ゴールドは今姉さんと同じ帽子を頭にかぶっている。
「なんだと!ケチつけるなよ!これはブルー先輩がくれたんだからな!」
姉さんが…!?
俺は思わず姉さんを振り返る。
すると姉さんは「そのほうが盛り上がると思って」とウインクをした。
「ほーらみろ!」
「…っ!黙れ!」
「もう!2人とも今日ぐらいは喧嘩しないで!」
見かねたクリスがいつもの様子で俺達を止めた。
「ほらほら悪い子にはケーキあげないわよ。せっかく今年は2つ用意したのに。もったいないわねー。」
姉さんは優しく微笑みながら2つのケーキをテーブルに置いた。
1つはイチゴショートで、もう1つはチョコレート。
たぶん優しい姉さんのことだから、甘いものが嫌いな俺のためにチョコレートのほうはビター味なんだろう。
「やーやー、シルバー君。お誕生日おめでとう!俺が切り分けてあげようか?」
「きもい。」
ケーキを見た途端に態度がころりと変わったゴールド。
現金なやつだな。
「ブルーさんの手作りですか?」
「まさか。私がそんな面倒なことするわけないじゃない。」
「あはは…。」
「これはね、イエローの手作りなのよ。」
「イエローさんの!?」
ブルーの言葉にクリスは驚きが隠せないようだ。
「そう。今日これないお詫びとお祝いなんですって。」
「え、じゃあこっちのチョコレートケーキはどうしたんスか…?」
ゴールドがチョコレートケーキを指差して聞く。
ちなみにコイツ、ちゃっかり自分の取り皿を持ってやがる。
食う気満々だな、おい。
「それはレッドから。コガネシティの1日限定先着3名しか買えない幻のケーキなのよ。用事があってこれないって言ってたから、買ってこさせt……買ってきてもらったのよ。」
「いや、今の少し語尾に無理がないッスか!?」
ああ、そういえば今朝レッドさんが来たけど、疲れきったような顔をして姉さんに何かを渡してたっけ。
なんだか不憫に思えてきた。
「グリーンもジムの仕事でこれないって言ってたわ。」
「結構皆忙しいんですね…。」
「そうね。せっかくのクリスマスなのに何で予定入れちゃうのかしら。まあ…この4人で楽しんでやりましょ!」
姉さんの言葉に、クリス、ゴールド、俺は顔を見合わせた。
4人…じゃないな。
「どうしたの?急に黙っちゃって。」
「あー…ブルー先輩には言ってなかったんスけど、実は今日、もう1人くることになってて…。」
ゴールドが柄にもなく気まずそうな表情を浮かべてそう言えば、姉さんの表情が一瞬にして変わった気がした。
「まさか…!あの子も呼んだの!!??」
「は、はい…。友達なんで…。」
クリスも気まずそうにそう言った。
姉さんははあー、っと盛大なため息をつく。
さっきから会話にでている奴は、俺達と同じジョウト出身のポケモントレーナー。
ゴールドの幼なじみでもあり、少し騒がしい女だ。
だけど別に嫌な性格でもないし、人に嫌われる要素はもっていない。
むしろ好かれやすいタイプだろう。
でも何故か姉さんは彼女を極端に嫌っている。
「呼ばないほうがよかったですか…?」
「…別にいいわよ。ちょーっと私の機嫌が悪くなると思うけどね。」
姉さんはにっこりと(黒い)笑みを浮かべた。
「で、でも彼女は悪い子じゃありませんし、私達の大切な友達なんです!彼女だけ呼ばないなんて仲間はずれにしてるようで、私には…。」
クリスの精一杯反論に、姉さんは苦笑いを浮かべた。
「分かってるわよ。私も少し大げさすぎたわ。今日はクリスマスだし、人数多いほうが楽しいしね。」
「ありがとうございます!」
「…でもねえ…、やっぱりどうしてもあの子とは仲良くなれないのよね…。」
「何かあったんスか?」
「いいえ、特には。なんだか…生理的に無理なのよ。」
「姉さん、それ理由になってな「さ、パーティー、始めましょう!とりあえず、ケーキ切り分けるわね。」
「よっ!待ってました!」
俺の言葉を軽く無視しして、姉さんがナイフを手にとった。
そしてそれがチョコレートケーキに触れそうになった瞬間……、
ピーンポーン
呼び鈴が鳴り響いた。
「おそろしくタイミング悪いわね、あの子。」
「開けてくる。」
鍵をあけようと立ち上がった俺を姉さんが引き止めた。
「シルバーは今日ぐらいはゆっくりしてなさい。それに鍵かけてないから。」
姉さんは優しく笑って今度こそケーキを切り始めた。
…やっぱり姉さんは優しい。
言葉では拒絶してても、こうやって実はちゃんと配慮してくれてるんだ。
「開いてるぞー!」
ゴールドがドアに向かって大声で叫んだ。
しかしドアが開く様子はない。
それどころか
ピンポンピンポンピンポンピンポン!!
……!?
ピンポンを連打するなっ!
ピンポンダッシュよりたちが悪い!
うざったいぐらいの連続押しに、姉さんがどんどん不機嫌になっていくのが手に取るように分かった。
「うるさいわねっ!」
姉さんがドアをバタンと乱暴に開けると…
「こんばんは!」
案の定、彼女だった。
…気がした。
いや、正確に言うと顔は見えず、声しか聞こえない。
積み上げられた荷物で顔が見えないんだ。
「どうしたのよ!なにその荷物!」
「プレゼントです。ちょっと用意しすぎちゃいました。えへへ。」
「『えへへ』じゃないわよ!というか鍵開いてたのに…。」
「両手が塞がっててドアあけられなくて…。」
「ああ。それで呼び鈴連打したってわけね。」
「はい!かろうじて肘は使えましたから!」
「そう…、」
明るく答えた彼女に、姉さんは笑顔を見せながらも黒いオーラを放っていた。
ああ、かなり怒ってる。
「とりあえず荷物置きなさい。」
「あ、はい。わっ、とと!」
彼女はしゃがみこもうとしてバランスを崩した。
「危な―……!」
「よっ、と!」
間一髪、ゴールドが支えて転ばずにすんだようだ。
「大丈夫か?たく、無茶するからだ!」
「あー…ありがとゴールド。」
「頼むからこれ以上ブルー先輩の機嫌を損ねるようなことしないでくれ。あの人が怒ったら、きっと人類滅亡より恐ろしいことに…「聞こえてるわよ、ゴールド。」
「ひ……!」
彼女はそんな2人のやりとりにへらへらと笑っていかと思えば……、
「な、なんだよ…?」
突然ゴールドをじーっと見つめた。
「………」
「(まさか、俺のこと…)」
「ちょ…!ゴールドはやめなさい!趣味悪いわよ!」
「なんだと、クリスてめー!」
ゴールドが騒ぎだしたその時、彼女がずいっと近づき、彼のかぶっていた帽子をすぽっととった。
そして庭に、投げ捨てた。
「は…!?何すんだよ!それはブルー先輩が俺にくれたやつなんだよ!」
「…ゴールドのバカ!」
「∑何で俺がバカ呼ばわりされなきゃいけねーんだ!どっちかっていうと俺が被害者だろーが!」
「被害者でも加害者でも、バカに変わりはないよ!バーカ!」
「てめー…!喧嘩売ってんのか!?」
「アンタ達、止めなさい!!」
姉さんが大声をだして彼らを一喝し、彼女の元へと近づいた。
「あんた、邪魔しにきたなら帰って?せっかくのパーティーが台無しよ。」
「……っ!帰りますよ!帰ればいいんでしょ!」
半ば怒鳴って駆け出そうとする彼女。
それはほんの一瞬。
一瞬だけど、目に涙がたまっていた気がした。
「ヤミカラス!“おいうち”!」
「う、わ…!?」
俺はボールからヤミカラスを出し、走っていた彼女の少し前のほうに攻撃させる。
その反動で彼女は足を止める。
「なにすんの!?」
「…ムキにならないでちゃんと訳を話せ。姉さんも言い過ぎだよ。」
俺がそう言えば、姉さんも彼女も黙り込んだ。
するとクリスが彼女のそばまで行って、まるで母親が子供を諭すかのように、優しく話しかけ
た。
「何があったか、言ってくれなきゃ分からないわよ?」
ゴールドもそばに行き、彼女に話しかける。
「こんな日に喧嘩なんてするもんじゃねーぞ?」
「ゴールドが言えたことじゃないけどね。」
「だー!クリスは一言多いんだよ!せっかくいいこと言ったつーのに…」
「何よ!本当のことでしょ!」
またゴールドとクリスの言い合いが始まった。
全くコイツは…。
しばらくして、黙りこんでいた彼女の目からポロポロと涙があふれだした。
「…今日、は……、シルバーの誕生日なのに、何でクリスマス、祝うの…?」
「「え……?」」
思ってもいなかった彼女の言葉。
きっと俺だけでなく、この場にいる彼女以外の誰もが呆気にとられただろう。
「クリスマスじゃない!今日は…シルバーの誕生日なのに!クリスマスなんかじゃ、ない、のに…。」
「何言ってんだよ?だから両方祝って…」
「誕生日とクリスマス、一緒に祝われるなんて…私だったらやだよぉ…!」
そう言ってたまっていたものを吐き出すかのように
彼女はわんわんと泣き出した。
クリスとゴールドは顔を見合わせ、やがて苦笑いをうかべる。
「何だよ、そんなこと気にしてたのかよ!」
「バカね。」
「な…!バカってひどい!あたしは真剣に…。」
またじわっと目に涙を浮かべた彼女に、不覚にも吹き出しそうになった。
まさかそんなこと考えていたなんてな…。
「別に俺はそんなの気にも止めてない。むしろ言われるまで考えたこともなかった。」
「そんな!シルバーまで!」
裏切らた!とでも言わんばかりの目で俺を見てくる彼女。
俺を恨むな。
ふと、突然姉さんが俺達の横を通り、彼女の前で止まった。
一瞬の静寂があたりに走る。
「…はっきり言うわ。私、アンタのこと、嫌い。」
「……!……分かってますよ。ブルーさん、いつも私のこと嫌そうな顔で見てましたから…。」
少しふてくされる彼女に、「でもね…」と姉さんは続ける。
「……シルバーのことそこまで考えてくれるアンタは嫌いじゃないわよ。」
「え……?」
「……やっぱり、アンタはバカで、素直すぎて、可愛すぎて……嫌いだけどね!」
「…!?」
誉められているのかけなされているのか分からない、と言ったところだろう。
彼女は複雑な表情になる。
そんな彼女に姉さんは、
「戻って続きやりましょう。もちろんシルバーのバースデーパーティーをね!」
にっこり笑ってそう言った。
「……はい!」
彼女もこの日一番の笑顔を見せた。
12月24日。
普通はクリスマスイブだが…。
アイツは俺の誕生日、と決定づけているみたいだ。
誕生日とクリスマスが一緒だなんて、今まで何とも思ってなかったけど…
そこまで考えてくれる奴がいるなんて、少し微笑ましい気持ちになった。
顔が緩みそうになるのをこらえていた時、振り返った彼女と目があった。
彼女はにっこり微笑むと、口パクで俺に向かって言った。
“ハッピーバースデー、シルバー!”
Not Merry Xmas!
(今日はクリスマスより大切な日!)
アイツらが帰った後、俺と姉さんは部屋の後片付けをしていた。
ツリーを片付けたり、食器を洗ったり。
「パーティーは楽しいけど片付けがめんどうなのよね。」
姉さんはため息をつきながらそう呟く。
「姉さん休んでていいよ?俺がやっとく。」
「ダメよ!今日はシルバーが主役なんだもの!休んでてちょうだい!」
少しムキになっている姉さんは何だか可愛い。
「シルバー、顔がゆるんでるわよ。」
「…!?//」
「オホホ!」
姉さんは楽しそうに笑ってまた手を動かし始めた。
「…シルバー、今日は楽しかった?」
「ああ。ありがとう、姉さん。」
「どういたしまして!喜んでくれてよかったわ。」
優しく微笑む姉さんを見ていたら…、なんだかアイツを思い出した。
「アイツ…、」
「え……?」
「いや……、まさかあんなこと考えてると思わなかったからさ。」
ただのバカなのか、それともひどくお人好しなのか。
でも、やっぱり彼女の言葉は嬉しかった―…。
「シルバー、また顔ゆるんでるわよ。」
「え……!//」
「ふふ、私、あの子はやっぱり嫌いだけど…、可愛いシルバーのためなら我慢できるわよ。」
「なにを…?」
姉さんはニヤニヤという笑顔を見せて、さぞ面白そうに言った。
「“お義姉さん”って呼ばれることよ!」
「ちょっと、姉さん!?//」
真っ赤になった顔をからかわれたのは、また別の話し。
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