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【ぬくもりは】
私はずっと、グリーンさんのことを想ってた。
容姿端麗に加え才色兼備。
無口でクールなところを覗けば、まさに誰もが憧れる理想の男性。
皆の憧れの的。
でも私が彼に憧れた理由は、彼がジムリーダに就任して少したった時に見せた“表情”。
トキワジムの庭でグリーンさん見かけた時、彼は手持ちのリザードンの頭を撫でていたんだ。
優しい表情を浮かべて。
そう、ただそれだけのこと。
それだけのことなのに、私の心は捕らわれた。
目が、離せなくなった。
でも、バトルセンスもなくて読書も好きじゃない私は、グリーンさんとの接点が何にもない。
だからって諦めたくなくて、用事もないのにトキワジムに行って顔を覚えてもらうように努力はした。
そんな努力が報われてか、今日最大のチャンスが訪れたんだ。
「……!」
買い物帰り、私の少し前をスタスタと歩くグリーンさんを発見したんだ。
私はダダダッと走っていって彼の背中に抱きついた…つもりだった。
ヒョイッ
「おわっ!」
ドサッ!
うまくグリーンさんに交わされて、私は地面に倒れこむ。
「…バカか、お前は。」
心配するでも同情するでもなく、彼はため息をついて冷たく私を見下ろしていた。
私は自力で立ち上がる。
「いや…寒かったんで、グリーンさんに抱きついて熱を奪おうかと思いまして…。」
失敗に終わったけどね。
「…くだらないな。」
「∑冷え性の私にとっては重要なんです!冬を甘く見ると痛い目みますよ!しもやけができたりあかぎれになったり、それから…」
「分かった。もういい。」
「えっじゃあ抱きつかせてくれるんですか?」
やった!今日はついてる!
そんなことを思っていたけど、次のグリーンさんの言葉が私にグサリと突き刺さる。
「ふざけるな。本当に冷え性に困ってる奴は、そんな短いスカートはかないと思うけどな。」
「…っ!これは…、」
このスカートは、グリーンさんに少しでも可愛く思われたくて買ったものなのに…。
私に似合わないかもって思ったけど、グリーンさんの事を思ったら、はく勇気がでたものなのに…。
「チッ…。じゃあな。」
グリーンさんは私の方をチラリとも見ずにあるものをポイと投げる。
そしてそのまま歩いて行った。
「カイ、ロ…?」
それは手のひらサイズの小さなカイロ。
しかも少しぬるまったい。
頬に当ててみたけど、
グリーンさんのぬくもりも…、
感じられない
「ああ、そういうこと…」
自分のことは自分で温めろと?
まるでそれは、
私に興味がないことを
暗示していた
「いつも一緒にいる人も、短いワンピースなくせに…。」
この前見かけた、栗色の髪の綺麗な女の人。
「寒い」って言いながらグリーンさんの腕を組んでいた。
彼は少し困ったような表情を見せていたけど、突き放す様子はなくて…。
あの人はいいけど
私はダメなんだ―……
そんなの、ズルいよ
でも、彼には
一生届かない気がするから
もう、お似合いの人が
隣にいるから
私は一生並ぶことのできない―……、隣にいるから
私が好きになったアナタの表情、
その人に向けられていたから
「諦めれば…いいんでしょうっ…!」
もうすぐ秋から冬に変わる。
そんな時季独特の乾いた空気が、妙に痛く肌に触れた。
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