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私の日課は、
ここに来ること
「………綺麗。」
そこには綺麗な風景が広がっている
………壊したくなるくらい、綺麗な
【光に照らされた闇】
「よっ!何してるんだ?」
彼はいつもと同じ満面の笑みで、あたしに話しかけてきた。
………ああ、
なんて妬ましい
いつも笑顔、
いつも明るい、
「何よ。気安く話しかけないでくれる?」
アナタを見てると、何だか腹立たしくなってくるの
でも、どんなに突き放したって、アナタはあたしに構うのね
「なんだよ。そんなに毛嫌いしなくったっていいじゃんか。」
ほら、苦笑いを浮かべながらもあたしの隣に腰を下ろす。
「なあ、いつもここにいるけど…、何見てるんだ?……海、か?」
私と彼の目の前には、青々とした海が広がっている。
「……違うわよ。」
私ははあ、とため息を1つ。
やっぱり。
皆から好かれてる人気ものの目には、所詮、綺麗なものしか映らない。
海とか太陽とか空とか…、目立ったものしか映らないんだ。
「気が散るからあっち行ってくれない?」
全身で拒否しているのに、
「もう少し話ししようぜ?」
あたしの心に土足で踏み込んでくる。
あたしのことなんて大して知らないくせに、
人の気も知らないで、
なんでも許されると思って、
これだから、人気ものは。
あたしの気持ちなんて分かりっこない。
「お願いだから帰って。」
もう、1人にしてよ
「………あ、」
彼が突然声をあげた。
そしてニカッと私に笑いかける。
「分かった。」
だから、
「鳥、見てたんだろ?」
近づいてほしくなかったのに
夕日に向かって飛ぶ、一羽の鳥。
あんなにちっぽけな存在なのに、明るい、まぶしい、あの夕日を目指しているの。
「鳥が好きなのか?」
「…好きじゃないけど。海とか太陽とかよりはマシ。」
「…そっか。」
ああ、もしかしたら
たった一羽で飛ぶ、その鳥に
常に孤独を感じている、その鳥に
自分を重ね合わせているのかもしれない
太陽は嫌い、
空は嫌い、
海は嫌い、
(皆から好かれてるから)
(私にないもの、もってるから)
「俺は……、全部好きだな。」
ほら、キラキラしてるの。
「皆、それぞれの良さがあるだろう?」
私が今まで考えていたことが、すごくちっぽけに感じてしまうぐらい、
アナタの考えは心に響く。
「……、レッド」
「ん?」
「どうしてあたしに構うのよ?」
きっと彼に質問するのはこれが初めて。
今まで彼が一方的に話しかけて、あたしが一言二言短く答えて、会話が成立しない…、そんな関係だったから。
彼は驚きながらも、嬉しそうに笑った。
鳥は、一羽
そうだな…、と彼は言う。
「なんか……、ほっとけないんだ。」
でもいつからか
孤独を感じなくなった
「嫌われてるって分かってても、つい声かけちまうんだ。ごめんな?」
太陽のあたたかさを
空の雄大さを
海の鮮明さを
「………謝ること、ない。人と話すのが苦手なだけで、別に嫌ってはいないから。」
身にしみて実感して
少し好きになったから
「そっか。」
彼はまた二カッと明るい笑みを浮かべた。
でも鳥は、気づいていないだろう
「名前…、」
「え…?」
実は、太陽も空も海も、
「俺の名前。“レッド”って、初めて呼んでくれた。」
ずっと鳥を見ていたんだ
「何でそんなの覚えてるのよ?」
「さあ…?何でだろう?」
聞きかえさないでよ、と心の中で呟いてたら、彼はスッと立ち上がる。
「でも、他の人が相手だったらたぶんそんなこと覚えてないと思う。」
彼は遠くを飛ぶ鳥を見ながら、優しい表情をした。
「………」
その表情に少し、ほんとうにほんの少しだけれど
レッドなら少しはあたしの気持ち分かってくれたりするのかな、なんて
「お、こっち来た。」
鳥が、私達の頭の上を飛んで、また迂回して海へと向かう。
「あんなに早くちゃ、捕まえらんねえな。」
「…できるんじゃない?」
「そうかー?俺、そこまでズバ抜けて反射神経よくないぞ?」
「追いかけなくても…、きっとあっちからくるわよ。」
レッドには、周りを惹きつける力がある。
「そういえば、」
現にあたしももう、
「あたしもレッドに名前呼んでもらったことないんだけど?」
彼に興味を持ってしまった。
光に照らされた闇
(彼はニッと笑うと、あたしの名前を口にした)