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私は恋をしています。
名前は、ゴールド。
同じクラスの、男の子。
【ねえ、これあげようか?】
「俺さ、トリュフが一番好きなんだよなー。」
「はいはい。」
バレンタインも近づいた今日この頃。
ゴールドがまた同じセリフを呟いている。
「なんだよ、つめてえなあ。」
「もう!アピールしすぎでうざったいの!!」
ホント……、1日に何回同じセリフ言えば気がすむんだろう。
「はっ、可愛くないやつ。」
「可愛くなくて結構ですー!そんなに何個もチョコがほしいの!?」
「ああ!男の価値を決めるようなもんだからな!」
ニヤリと笑うゴールドにため息をつく。
「好きでもない女の子からも貰いたいなんて、信じられない。」
「あげる人もいない奴に言われたくねぇよ!」
「いるよ!今年はその人にだけあげるんだもん!」
……アナタに、ね。
「……好きな奴いるのかよ。はっ、せいぜい頑張れよ。」
まったく私の気持ちも知らないで…。
「余計なお世話ですー!」
こんな態度とる私も私なんだけどね。
でも、つい思っていることと逆のことばかり言っちゃうんだ。
ほんと、私って素直じゃなくて可愛くないな。
「また喧嘩してるの?アナタ達。」
腰に片手を添えて呆れ顔でやってきたのは、私の友達であり、クラスの学級委員である、クリス。
「クリス!聞いてよ!ゴールドが……」
「………ちょっと来なさい。」
「えっ?えっ?」
強制的に連れてこられたのは、女子トイレ。
「もうクリスー!トイレぐらい1人で行ってよー。」
「違うわよっ!アナタ、そんなことじゃいつまでたってもその関係のままよ。」
「うっ…分かってるけど……。」
クリスには私の気持ち、教えたんだ。
親友だからね。
「とにかくバレンタインデーまでに何とかしなさいね。」
「う、うん……」
そうは言ってみたものの、いきなり素直に慣れるはずもなく……。
教室から戻るなり、ゴールドに突っかかられた私は、また言い争いになり……、
「ゴールドなんて、大嫌い!!」
ほら、また正反対のことを言ってしまうんだ。
「そりゃよかった。俺も、お前みたいなやつ嫌いだからな。」
「………!!」
そんな私達の様子を、クリスはため息まじりに見ていた。
バレンタインデー当日は、なんの進歩もないままやってきた。
ただ一つ違うのは、私のポケットにはいった、小さなラッピング袋。
でもなかなか渡すタイミングが…、
渡して笑われたらどうしよう。
ゴミ箱に捨てられたらどうしよう。
それは…ないとは思うけど。
ほら、こんなうじうじしてるから、あっという間に放課後になっちゃったじゃない!
「私、先帰ってるから。」
ニコッと笑い、さっさと教室をでていくクリス。
「…」
「…」
他の人もいなくなり、教室にはあたしとゴールド、二人きりに。
「なあ、もうチョコあげたのか?」
唐突な質問に肩がはねた。
ゆっくりと素直に、素直に、と自分に言い聞かせる。
今年のチョコはゴールドにあげるよ、って伝えなきゃ。
「今年「おい、聞いてんのかよ?」
「!!ゴールドには関係ないでしょ!?」
………大失敗。
ああ、結局いつもとおんなじじゃない…。
「なんだよ。教えてくれたっていいだろ。」
「誰が教えるもんです「ゴールド君!!」
「「へっ?」」
声につられ同時に振り向いた私達。
そこにいたのは隣のクラスの女の子。
あっ、あのこ知ってる……、結構人気があるこで…。
が、ゴールドを呼び出してる!?
うそー!?
ちらり。
気まずそうにゴールドがこっちにめをやってきた。
「行きなよ。呼ばれてるよ。」
「…おう。」
なんとなくぎこちない様子でゴールドは教室をでていった。
「はあ…もう帰ろーっと。」
ゴールド、きっとあのまま告白されて、そのままオッケーしちゃうんだろうな…。
あのこ、可愛かったし…。
私って、いつもそうだ。
手がとどかなくなってから、やっと、後悔する。
いつもいつも、素直になれなくって、勇気がでなくって。
今度こそ、って決めたのに。
「はあ……」
もう、手遅れ。
私が玄関で靴を履いていると。
「チョコ渡せたの?」
クリスが下駄箱の影からヒョコッと顔をだした。
「クリス、待っててくれたの?一緒に帰ろーよv」
「渡せたの?」
……話をはぐらかすのは難しいみたい。
「……渡してない」
「いいの?このまま終わっても。」
「…うん。私とゴールドはさ、このままの関係が一番いいんだよね。」
「…そんなこと言って…。結局は逃げてるだけじゃない。」
「……そうかもね…」
ただ心のないような返事をする私に、クリスは軽くため息をつき、そっと私に耳打ちをした。
「えっ?」
その言葉に、私は耳を疑う。
クリスはチラリと後ろを見ると、「じゃあね。」といってタタタ、と走っていった。
そしてクリスと入れ替わるように、
「おい!!」
「ゴールド!?」
アナタがあらわれた。
「…。」
「………なに?」
「いや、別に…、暗いから送ってやろうかと思ってさ。」
「………そんなにチョコが欲しいの?さっき貰ったのに?」
……私のバカ。
やっぱりトゲトゲしい、嫌みな言い方しかできない。
「決めつけんなよな。さっきのは、断った。」
「えっ!?どうして!?」
「っ!別に、関係ないだろっ!」
「………。」
顔を真っ赤にして、そっぽを向くゴールド。
ゴールドの予想外の反応に、私はクリスの言葉を思いだす。
(知ってた?ゴールドって、)
「…………ねー、ゴールド、言ったでしょ?あたしは、今年、好きな人にしかチョコあげないって。」
(けっこう人気あるのよ?)
(今年も何人かに呼び出されてたし)
「……なんだよ、俺には絶対にやらねーから、さっさと帰れっていいてーのか?」
「……………」
違う、
(でも、実は、)
「そーかよ。ほんと、可愛くねー女だな。」
違うよ、
(女の子からのチョコレート、全部断ってるの。)
いつもの私なら、ここで憎まれグチの一つぐらい言ってた。
でもそしたら、前には進めない。
言葉にしないと伝わらない。
(「一番ほしい奴からしか貰わないから」って)
「ゴールド。」
「あん?なんだよ。」
(だから、その人のためだけに、今までアピールしてたんじゃない?)
私は無言でバッグから一つのラッピング袋を取り出す。
(ねえ、)
そして、ゴールドの目の前に差し出した。
(素直になったらいいのにね、)
(お互いに。)
私達は、いつも、素直になれなくて。
ストレートに想いをつたえるよりも、きっと、
少しひねくれた表現のほうが、似合ってる。
でも、そんな似たもの同士だからこそ、
照れくさくて素直になれない気持ちはよく分かる。
だから、言葉足らずな私の想いも、きっと、
ゴールドに伝わった。
ねぇ、これあげようか
(しょーがねー、もらってやるか!)
(……欲しくないなら別にいいよ。)
(欲しいに決まってんだろ!//)
(!//)
少しだけ素直になれた、今日この頃。