時候の挨拶を覚えよう
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▼5月(エメラルド)
木々が緑に色づく季節。
木陰に寝そべって規則正しい寝息をたてている彼女を見つけて、エメラルドは呆れてため息をもらした。
確かに今日は暑くもなく、寒くもなく、過ごしやすい気温で。
昼寝をするには最適だろう。
でもここは野生ポケモンがごく普通に出現する場所。
こんな状態で襲われたりしたら…、
ガサッ!!!
「野生のラクライ、ッ」
いわんこっちゃないと思ったのは一瞬。
ラクライの「ギャオ!」という鳴き声が聞こえて、なぜかぐるりと世界が一回転。
次の瞬間には景色が逆さになっていた。
「はあ~。あれ?エメラルドなにしてんの?」
呑気な声とともに逆さになったイミテの顔が自分をのぞき込む。
その横に、これまた逆さになったアゲハントがパタパタと飛んでいた。
頭にぼーっと重力がかかる。
…あ、自分が逆さになっているのか、とそこで初めて気が付いた。
「なにしてんのはこっちのセリフだ!なんだよこれ!」
「野生ポケモンがでてきたらいとをはくで捕まえるようにアゲハントに指示して、木に潜ませといたの。エメラルドのこともついでに捕まえちゃったみたいね。」
悪びれた様子もなくイミテは笑顔を浮かべて、よしよしとアゲハントを撫でた。
「撫でてないで、とにかくおろせー!!」
「はいはい分かった分かった。暴れないの。頭から落ちるよ?」
そう言ってイミテは糸に手を伸ばす。
必然的に距離は近づくわけで…
密かに、彼女に恋心を抱いているエメラルドはふいっと顔を背けた。
その顔は少し、赤い。
「…エメラルド。ありがとね。」
「なにが?」
「私のこと心配して探しにきてくれたんでしょ?」
「…。」
「でもぜーんぜん平気!エメラルドが思ってるほど、私落ち込んでないし。」
嘘だ。エメラルドは思う。
だって目は少し赤いし、少し腫れてるし、その表情にいつもの元気がない。
ほんの些細な変化だけど、見落とすはずがなくて。
「…、」
でもかける言葉が見つからなくて。
サアアア…と風がふく。
風に混じって、彼女の薫りが鼻に届いた。
こんなに近くにいるはずなのに。
「…っ、あのさ!やっぱり「大丈夫。」
意を決して発した言葉は、彼女の笑顔とともにかき消される。
「…大丈夫。この季節は、思い出しちゃうだけなの。彼が好きなあの子は、このぐらいの緑色の葉っぱでできた服を着てたから。ただ、それだけ。」
「イミテ、」
「よーし、とれた!」
「いて!」
ドサリ。
支えていたものがなくなり、エメラルドの身体は重力に従って下へと落ちた。
「結局落としてるじゃんか!」
「あははー!上手くいかなかった。ごめんごめん。」
そう言って笑うイミテは、いつもと同じだった。
彼女はいつも。
自分に弱さを全て見せてはくれない。
新緑の候・薫風の候
(だから近いはずなのに、)
(こんなにも遠くに感じる)
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あれ?5月は爽やかな話しにしようと思ったはずなのに(^o^)